第7回 日本高気圧環境・潜水医学会 中国四国地方会「高気圧医学の世界」

玉木病院高気圧治療部

「高気圧医学」というものをご存知でしょうか?人体は60兆の細胞で構成されており、その一つひとつの細胞のミトコンドリアが栄養と酸素を利用して、生きていくために必要なエネルギーを生産します。酸素を取り入れなければ生きていけないのは誰もが知るところですが、細胞まで酸素を運ぶのに血液中のヘモグロビンと結合する『結合型酸素』の他に血液の液体中に溶解している『溶解型酸素』の2種類あることはあまり知られてはいません。結合型酸素は血中のヘモグロビンの数によって量が決まり、ヘモグロビン以上の酸素を細胞に供給することはできませんが、溶解型酸素は高気圧環境で高濃度酸素を吸入することで量を増やすことができます。また溶解型酸素は結合型酸素に比べ小さいため、結合型酸素が通れない毛細血管の末端まで酸素を供給できるという特性を持ちます。簡単に説明すると、高気圧環境で、強制的に酸素を体の隅々まで供給することで、効果的な治療を施すことができたり、回復を早めたりすることができます。また、潜水医学との関係は、潜水病(=減圧症)の唯一の治療法が高気圧酸素治療法とされ、海軍を持つ国々で先進的に研究され発展してきました。
その高気圧医学の世界で、現在、萩は関心を寄せられる場所となっています。その理由は萩のアマ(海士・海女)と玉木病院。基本的に潜水病はスクーバダイビングでしかならず、素潜りをするアマはかからないと言われていますが、萩ではアマが潜水病にかかったという実例が数件あります。その治療にあたり、原因解明のため研究し、その結果を国際潜水高気圧環境医学会で報告され、また第46回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会において最優秀発表賞を受賞されたのが玉木病院院長・玉木英樹先生です。現在では、世界各地から研究者が萩を訪れるほどとなっています。
そんな玉木先生はこの度、第7回日本高気圧環境・潜水医学会 中国四国地方会の会長に就任し、萩で同会を開催することとなりました。もちろん萩で開催されるのは初めてで、この機会を医学のためだけでなく、地域のためにと市民公開講座も開かれます。その公開講座では、山口大学院医学系研究科 緊急・総合診療医学分野 鶴田良介教授をお招きしての「ドクターヘリ、17分後の出会い」と、㈲中国ダイビング代表取締役 錦織秀治氏、沖縄県ダイビング安全対策協議会 会長 村田幸雄氏、DAN JAPAN トレーニングディレクター野澤徹氏、琉球大学医学部付属病院 高気圧治療部 部長 合志清隆氏をお招きしての「潜水医学講座~潜水事故を防ぐには?」の二講座があり、どちらも参加無料。
「この萩ではドクターヘリで搬送される方は少なくなく、また誰もがその可能性を持っています。そのドクターヘリの(山口県の)責任者である鶴田教授のお話を聞くことができるのは大変有意義なものです。また、潜水事故というのは、アマの方だけでなく、海水浴でも起こり得ることで、市民の皆さまにはその知識を正しく知っておいていただきたいです。どちらの講座も質問時間を設けておりますので、是非この機会に業界の最先端にいる方と交流をもってもらい、関心を高めていただきたいと思います。」と、玉木先生。講座に来られた方には、特別に作成した水難事故時の救急処置の手引き書を配布されるほど力を入れておられます。
ちょっとした知識が大切な人の命を守れることができます。是非、この機会をお見逃しなくお運びください。
第7回日本高気圧環境・潜水医学会 中国四国地方会 市民公開講座
開催日 3月12日(土)
時間 15時30分開講/15時30分~16時25分「ドクターヘリ、17分の出会い」/16時30分~18時「潜水医学講座~潜水事故を防ぐには?」
会場 萩本陣
参加費 無料
事務局 玉木病院(TEL:0838-22-0030)
※画像は玉木病院高気圧医療部の皆さんと玉木先生