読者の皆さんは重度認知症デイケアをご存知でしょうか？言葉を聞くだけだと、とても症状の重い認知症患者向けのデイザービスように感じますが、実は違います。認知症とはどのようなものか、またどのような医療サービスや介護サービスがあるのかを知っておくことは、高齢化社会の最先端と言われるこの北浦圏内に生活する私たちが知っておいて特こそあれど、損はないと思います。今号の北浦うぇぶでは、萩市初の重度認知症デイケアを設立する河井クリニックの河井裕幸院長にお話を聞いてきました。
Q、重度認知症デイケアは聞きなれない言葉ですが、簡単に説明していただけますか？
A、先ず知っていただきたいのが、「重度認知症デイケア」という単語で使われている「重度」は決して認知症重症度の「重度」ではないということです。とても紛らわしいのですが、重度認知症デイケアは軽度の認知症患者さんもご利用可能です。また、介護度に関係なく、BPSD（行動・心理症状）やADL（日常生活動作）、IADL（手段的日常生活動作）の低下でご家族の介護負担が増している患者さんが対象となります。
Q、BPSD（行動・心理症状）、ADL（日常生活動作）、IADL（手段的日常生活動作）と難しい言葉がありましたが･･･
A、認知症の症状は大きく２つに分けられます。認知症の直接の原因である「脳の細胞が壊れる」ことで起こる症状を中核症状と言い、患者さん各々が元々持ち合わせている性格や置かれている環境が大きく作用し症状に表れるものをBPSD（行動・心理症状）と言います。例えば、認知症が発症して今まで出来ていたことが上手にできなくなっただけであれば中核症状のみとなりますが、上手く出来なくなったことで、落ち込んだり、家族から迷惑がられたことで、精神的に不安定になること（睡眠障害、陰鬱、幻覚、錯覚、妄想、俳諧）は、BPSD（行動・心理症状）に分類されます。またADL（日常生活動作）とは、食事や排泄、整容、移動、入浴などの基本的な行動を言い、IADL（手段的日常生活動作）はADLより複雑で高次な動作、例えば買い物や洗濯、掃除など家事全般や、金銭管理、服薬管理、自転車・自動車の運転などを言います。
中核症状、BPSDに加え、ADL、IADLのレベルなど、認知症の症状は決して一つの物差しだけで量ることはできず、サービスも色々あり保険制度も分類されています。
Q、重度認知症デイケアは具体的にどのようなサービスで、どのように分類されるのでしょうか？
A、介護ではなく医療に分類され、デイサービス（通所介護）ではなく、デイケア（通所リハビリテーション）になります。リハビリテーションですので、BPSDの軽減、ADL、IADLの向上を目的とするものです。少し複雑なところで、重度認知症デイケアは、介護保険と併用できますので、介護保険限度額を使っていても利用できます。その為、介護保険のデイサービスに行きつつ、空いた日に重度認知症デイケアを利用することも可能です。更には自立支援制度等を併用することで大幅に負担額を減らすことができます。
Q、それはありがたいサービスと制度ですね。それゆえ、今までこの萩市に重度認知症デイケアは無かったことが不思議です。
A、北浦だけでなく県内でも3.4施設しかありません。先ず、重度認知症デイケアは精神科医療施設となりますので、精神科を標榜する医療機関が設置できるものです。また、市民の認知症に対する認知度の低さも原因の一つだと思います。認知症患者の介護は大変だというだけ認識し、BPSDを軽減することで、ADL、IADLを向上させ、介護負担が少なくなるものだと認知されていない、また保険の併用ができることをご存知でない方は多いことに加え、精神科医の人材も都市部に比べ圧倒的に少ない地方都市の医療現場では、重度認知症デイケアに労力を費やすことが難しいといったことが大きな原因かと思います。
Q、高齢化社会の最先端と言われるこの北浦では、今後、とても重要視されるべき分野であり、その先駆者となられるわけですね。ありがたいです。最後に読者の方に一言どうぞ！
A、繰り返しになりますが、「重度」と付いている認知症患者への医療ですが、決して重度認知症患者のみのリハビリテーションではありません。家庭と医療機関を繋げるリハビリ施設ですので、通院、日帰りとなります。それと、良く問い合わせをいただくのですが、食事代は医療費に含まれていますので、別途お支払していただくことはありません。
これからの社会に有意義な施設となることを目指しておりますので、ご理解いただければと思います。
河井クリニック
萩市土原４４５
℡ ０８３８・２４・３１１３
診察日：月、水、金、土 ※土曜日は午前のみ
診察時間：午前診療9時～13時／午後診療15時～18時
HP ： http://www.hagi-kawaiclinic.jp
