北浦リレーションシップ 第33回 高橋隆宣さん

北浦リレーションシップ33人目は前回の福島淳也さんからのご紹介で、萩市江崎にある浄土真宗本願寺派 教専寺 住職 高橋隆宣さん(49歳)です。(発行日は2013年6月20日)

969459_322082644590215_548161756_n

Q1.趣味は何ですか?
学生の頃から木版画を制作しています。昨年は萩市内の「藍場川の家」での個展に多くの方に来て頂き、ありがとうございました。写真とドライブも好きなのでカメラを持ってあっちこっち探索しています。

Q2.夢は何でしょうか?
今年50歳になります。現在の平均寿命の80年を1日の24時間に振り当てると50歳は午後3時なので残りは9時間、元気でいられるのはそのうち6時間分ぐらいでしょうか。僕は音楽を聴くことは好きなのですが自分で楽器を演奏することは未経験です。息子がその道を志して神戸で活動しているので父である僕もちょっとはできるんじゃないかと、残り時間の間にギターとか弾けるようになれないかなと思っています。

Q3.幸せだなと思うときはどんなときですか?
萩市生涯学習活動の一つとして江崎で木版画教室を開いているのですが、生徒さん(と言っても僕より年上ですけど)が創意工夫しておられる姿をみると教室を始めて良かったと思いますし、生徒さんの全国規模での公募展の入賞は自分のことのようにうれしかったです。

Q4.観光客にお奨めしたい場所はどこですか?
先ずは新鮮な海産物を食べさせてくれる店です。京都の友達が来てくれた時はイカ料理を日々研鑚されている「梅乃葉」さんに連れて行きました。食事の後は観光となるわけですが、残念ながら観光の「華」はありませんから海沿いの景色、特に夕陽を奨めています。北浦地域ほど海にべったりと沿った国道は他府県では見られません。そこにはたくさんの夕陽スポットがありますので寺のホームページや個人のフェイスブックで発信、紹介しています。

Q5、よく行くお店はどこですか?
ここに住むなんて思いも寄らなかった30年前に萩焼の窯元をあちこち訪ねました。ガタガタ道の奥にひっそりとあった「人丸窯」は当時のまま変わってなくて時々お邪魔しています。
それに、よく行くというわけではありませんが店の雰囲気が気に入ったりコーヒーが美味しい店は近くを通った時にユニホーム姿でなければ立ち寄ったりします。萩の「藍場川の家」「長屋門珈琲」江崎の「グルニエ」

Q6.この北浦で一番美味しいと思うものは何ですか?
時期ごとに変わる海産物はどれも美味しいです。関西で普通に売られているイカはロウソクの様に真っ白なのですがここに来て透明で斑点が点滅するイカに感動しました。

Q7.あなたが住むこの街の好きなところは何ですか?
海に山に風景はきれいで交通量も少なく、走り始めたら10キロでも20キロでも信号がない区間もあるドライブに最適の環境です。また、工芸や演芸などに秀でた才能をお持ちの方が多くおられますが、そういう一流の方とも気軽に話が出来るのも田舎ならではです。

Q8.では、この街の問題点は何だと思いますか?
人口の多い地域が交通網も各インフラも便利になり続け人口の少ない地域はおいていかれている、山陽側と山陰側のあからさまな格差をもどかしく感じています。ここで生まれ育ったわけではなく、関西で会社員だった僕は40歳からこの地へ来たのですが、客観的に人口ピラミッドを想起して頭を抱えました。誰もがわかっているはずの「過疎高齢少子化」が一番の問題でしょう。そこには全域を底上げ出来るような経済力は望めません。道路事情は良いのですが、みんなが車をお持ちではありませんし、高齢で免許証を返納される方も多い中、公共交通の便が極端に悪いので日常の買い物も通院も不便なのが現状です。「空き家バンク」を利用されたのか、定年して老後は田舎でのんびりしたい、と終の棲家を求めて来られたのにお医者が必要な状況になって「こんなはずではなかった」と都会に戻った方もいると聞きました。このままだと15〜20年後は一体どうなってしまうのか心配です。

 Q9.その改善策をどのようにお考えですか?
①「過疎高齢少子化」から「空き家問題」が生まれ、同様の問題が墓にも起きています。面倒をみる人がいなくなるので拙寺では誰でも利用できる合同墓を建てました。
②数年前に日本中の港を訪ねて研究しているという方が寺に立ち寄られました。その方が言うには穏やかで干満の差が少なく、碇を下ろさずに船を庭先の犬のようにロープだけで固定出来る港は他にはないそうです。江崎港は内海化しているので外海が荒れていても穏やかで、外海に出ればきれいな景色が展開します。今は就労先がなくて人口増加は望めませんが、そんな恵まれた地形を利用してマリンレジャーの一大基地になれば定住する人が必要になるかも知れません。現実には漁業との兼ね合いもあって難しいかもしれませんが、関西でアミューズメントの仕事をしていたので「遊び」からの発想です。
③近隣の食事ができる店が地元以外の人も口コミやネットの情報でやって来るお店に変化しつつあるようです。人は〝楽しいところ〟〝充実感を感じるところ〟〝おいしいものがあるところ〟には無理してでも出掛けるのです。便利な高速道路と新幹線がなくて行くには不便だけど、なんとか辿り着いたら普段見落としている時間を見直せておいしいものときれいな風景のおもてなしを享受できる地域として歩み始めたのかも知れません。
④「人口が減っているとは言え、ゼロになることはないしいつか田舎が見直される時が来るだろう」と能天気な自己暗示に甘んじて成り行きまかせにしている場合ではないと思います。手遅れになる前に地域協力して5年先、10年先……を見据えた将来像を考察すべきです。

 Q10.この人は凄いと思う北浦に住む知人、友人を紹介してください。
江崎の喫茶店「グルニエ」の店主、中本修一さんです。豆にも水にもこだわり、焙煎方法も研究されておいしいコーヒーを開発されました。自分の山の粘土を使って喫茶店の横にある窯で焼いた手製のカップで出てきます。店のコーデュネートもカメラマンとしての写真のセンスも良いし、多くの方に紹介したい人の中の一人です。