NEW OPEN パナデリア KIKI

長州藩3代藩主毛利吉就が創建し、吉就から11代までの奇数代の藩主とその夫人及び一族、関係者の墓がある国指定重要文化財・東光寺の敷地内に今月3日にオープンしたパナデリアKIKI(キキ)さん。

パナデリアとはスペイン語で「パン屋」です。店主は東光寺住職の娘さんの尾河香さん(25歳)。尾河さんは学生時代からお菓子づくりが好きで、その延長線でパン作りにもはまり、東京の大学に進学、そのまま就職し、東京で生活しながら趣味として美味しいモノを求め食べ歩きはもちろん、パン作りもされていたとのことです。地元萩にパン屋を出店することになったきっかけは、23歳のときに転職を決め、次の職につくまでの期間に帰省したとき、尾河さんのお母様から「お店出してみない?」と言われたことから。「失敗しても若いうちならやり直しが利くし、若いからチャレンジできるなと思い、決まってた転職先にお断りを入れました。」と尾河さん。お店出すなら毎日食べないお菓子ではなく、毎日でも食べれるパンを出そうと決められました。

元々倉庫だったところを改装し、厨房と販売スペースにされているパナデリアKIKI。「開業準備で一番苦労したのは、倉庫にあった高祖母の荷物を片付けることでした。100年前のモノばかりなので扱いにも気を遣いました。整理されてからは早く、1ヶ月ほどで改装工事を終えました。」と尾河さん。改装された内装は花柄の壁紙で覆われ、外観から覗えない華やかな空間になっています。
さて、提供されるパンの方はというと、カンパーニュ(プレーンと日替り)、フォカッチャ、食パン、そしてメロンパン。コンセプトを尾河さんに聞くと「おやつとして食べるパンではなく、食事として食べるパンを提供したいなと。特に萩にはハードパンを食べる文化がないので、ハードパンの良さを知ってもらいたい、拡げたいなと思っています。」と。ハードパンを好む人は山口まで買いに行く人も少なくないそうで、ハードパンファンにとっては有難い出店です。また、こだわりは、その製法にもあり、発酵種法のひとつ「ポーリッシュ法」で作られます。ポーリッシュ法とは液体に近い生地「液種」を仕込み、一晩冷蔵庫でゆっくり発酵させ、2日目に本捏ねをし、再び冷蔵庫で一晩寝かし、3日目で成型し焼くといった手間と時間がかかる製法。この製法でつくると小麦粉にしっかり水分が吸収され、もっちりとした食感が味わえるだけでなく、冷蔵熟成するので小麦の旨みや甘みが引き出され、味わいも深くなります。さらには種類ごとに小麦粉を変えているそうで、それぞれの商品にあった食感を出されます。

オープンからの手応えを聞くと「タイムスケジュールどおりやれるか不安で、毎日が緊張の連続でした。第1週の4日目には体力的にとてもキツくクタクタでした。その中でも、驚いたというか嬉しかったのは、北海道から観光で来られた方が、メロンパンではなく、カンパーニュをご購入してくれたことで、遠方の方が食事パンを求めてくれたことはとても励みになりました。」と振り返られます。とはいえ、尾河さんの思いとは裏腹に、現在1番人気はメロンパン、2番人気は食パンだそうで、積極的にハードパンをお求めになられる方はまだまだ少ないとのこと。
「パンだけの話じゃなく、萩の人には色々な食べ物を受け入れてもらいたいなと思います。」と、若き女性起業家の挑戦は始まったばかり。日本史上、かなり早い段階でパンは科学者・中嶋治平によって萩に持ち込まれ、奇兵隊の陣中兵糧としても使われていました。長州藩ゆかりの場所から新しいパン文化を浸透させる。期待せざるを得ません。

パナデリア KIKI
萩市椿東1647(東光寺駐車場側入口横)
営業日 金・土・日・月
営業時間 10時~15時(売り切れ次第閉店)