実用書道教室「伝心書道会」代表 米原碩秀さんインタビュー

実昨年5月、萩市江向にて密かに開室され、口コミにより生徒が徐々に増えている実用書道教室「伝心書道会」。毛筆書だけでなく、筆ペンやボールペンを使って年賀状、手紙、宛名や祝儀などののし袋を美しい文字で書けるようになるための教室です。また、気軽に書道を楽しめるということで、大人のコミュニティーの場として人気のようです。その「伝心書道会」の代表である米原碩秀さんにお話を聞いてきました。

■米原さんご自身の書家としての歩み、そして書道教室を始めるまでの経緯をお聞かせください。
-書との関わりは小学1年生のときからです。萩市の金谷天神祭りで毎年行われる書道展で賞を貰ったのがきっかけで、故小倉國幹先生が開かれていた書道教室に通い始め、高校3年まで國幹先生に師事し学ばせていただいておりました。
高校卒業時に一度、書から離れ、別の道をも考えましたが、体調を崩し受験勉強が十分できなかったこともあり、改めて書家の道を目指そうと全国的にもトップクラスの書道実績のある大東文化大学に進学しました。國幹先生も大変喜こんでいただき、当時いただいた雅号「碩秀」は今も大切に使っています。
大学入学と同時に、故上条信山先生に師事しました。全国から集まった書家を目指す人たちからも刺激を受けながら、ひたすら書に打ち込みました。卒業後も東京近辺に残り、そのまま書家として励もうと考えていたのですが、事情もあって地元に帰ることとなりました。萩に居ても書家を目指せないことはないのですが、実質、本格的に書家としての道を登りつめていくことを断念したのはこの時でした。

■それから書の道からは遠ざかっていのたのですか?
-いえ、決してそのようなことはなく、採用していただいた萩市役所に勤めながらも、心のどこかで諦めきれず、東京に行き来する日々を送っていました。また書を続けるため幾度も教職への転職も考えましたが、行政の仕事が次第に面白くなり・・・、面白いというのとはちょっと語弊があるかもしれませんが、地方行政の幅広さや重要性を知り、微力ながらも萩市の発展のために尽くそうと思い、書は趣味に近い形で続けるようになりました。
それからは行政マンとしての業務の傍ら、書の腕を買われて依頼を受けることも多くなりました。例えば、横断幕、看板、講演の演題など3~5mの大きなものや目録や委嘱状や卒業証書なども書いてました。私が入所したころはパソコンどころか、ワープロもない時代だったので、重宝されたのではないかと思います。昭和から平成初期の間で萩市が出した賞状の多くは私が書いたものが使われています。また、石碑などを建立する際の揮毫などもいくつかさせていただきました。面白いところでは、橋本町付近を藍場川が横切っていますが、橋の欄干に「鯉」という字を使ったモチーフの字を書きました。横から見ると鯉が跳ねたように見えます。

■そうして退職を迎えられ今に至るわけですね?
-はい。退職後は、それまでお世話になった方、特に私を書の道へ導きご指導いただいた諸先生方や母への感謝の気持ちを込めて先ずは展示会を開きたいと考え、平成27年に書作展を萩市内で開催しました。そして、芸術書道だけでなく、在職中重宝されたように日常で使われる文書等も美しく書くことも大切なことだと感じ、書道教室を開くことを考えました。当初は、毛筆も良いかなと思っていましたが、技術の発展とともに、性能の良い筆ペンが出てきましたので、気軽に書を学べる実用書道教室を開設しようと、昨年5月から看板を出して始めさせていただきました。

■確かに最近の筆ペンは使い勝手が良いです。
-そうですね。使い勝手が良いだけでなく、毛筆とほとんど変わらないように書けるようになったのが大きな変化です。もちろん毛筆のような潤滑や濃淡の表現や大きな字を書くのは難しいですが、かなり毛筆に近い表現ができるように改良されてます。それでいて、墨や硯などの道具を用意しなくてもキャップを取ればすぐに使えるので、筆文字を気軽に学ぶにはうってつけだと思います。

■年賀状の宛名や一言の挨拶文、慶弔時の記帳など、そう多くないとは言え筆ペンを使う機会はあり、その都度綺麗に書くことができたらなと思います。でも、大人になっての書道教室は、少しハードルが高く感じますので、習うとしたら通信教室かなと安易に考えてしまいます。
-そのような声をよく聞きます。なのでというわけではないですが、当書道教室は大人の方のみを対象としています。また、書の上達は教材だけではなかなか難いものです。自分の間違っているところに気付けないからです。間違った書き方を100回、1000回繰り返し書くだけではなかなか上達するものではないですね。間違ってる部分の直し方を教わりながら練習することが大切なことだと思います。
このように言ってしまうと、随分厳格な教室のように思われるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、コーヒーを飲みながら、会話と共に書を楽しめる空間を用意しています。年末の時期には年賀状の練習をしますので、教室でそのまま自分の年賀状を書く時間に当られたり、のし袋を持参されて、私のお手本で書かれたりする方もおられます。ちょっとしたサークル感覚で通える書道教室です。

■なるほど。実際に通われている方は現在何人おられて、どのような年層の方でしょうか?
-現在は15名ほどの方がお越しになられています。年層は20代から60代と幅広いです。当書道教室の特長としては、正座ではなく机と椅子を使って膝に負担のないようにしています。一度に最大6名の教室としています。ゆったりとした空間と時間のなか、一人ひとりに丁寧で、きめ細やかな指導が出来ればと思うからです。また、一般の毛筆も学びたい方にも対応させていただいておりますし、筆ペンであろうとも筆の動きを理解してもらうため毛筆を使ってもらうこともあります。更に、教室にあるモニターで高名な書家の方の動画や墨や筆硯の製作動画を観賞したり、会話も楽しめるよう、別室に自由に使えるティールームも用意しております。もちろん、コーヒー、茶菓子はサービスです(笑)
このような環境のなか、気軽に実用書道を学びつつ、社交の場として楽しんでいただけるのも当教室の特長ではないかと思います。

■お話を聞いていて、入会したい気持ちになってきました。入会希望者はどうしたらいいですか?
-見学、体験に応じております。現在キャンペーンというわけではないですが、新規入会先着20名の方に毛筆の大筆と小筆セットをプレゼントしております。先ずはお電話にてお問合せいただければと思います。

■ありがとうございました。

伝心書道会
〒758-0041 萩市大字江向362番地6
℡ 0838-26-0228