Iターン人インタビュー はぎまえ698合同会社役員、萩市ふるさとツーリズム推進協議会事務局長、はぎまえ698トリップ 代表 宮﨑 隆秀さん(39歳)

2015年に地域おこし協力隊として萩へ移住し、翌年、県内では初となる協力隊同士の結婚。夫婦共に任期を終え、昨年はぎまえ698合同会社(代表社員は宮﨑さんの奥さん河津梨香さん)を設立。同社で、今までの萩にない観光商品を造成される宮﨑隆秀さんにお話を聞いてきました。

■地域おこし協力隊として萩に移住される前は、どこでどのようなことをされていたのでしょうか?また地域おこし協力隊に応募した経緯をお聞かせください。
-出身は神奈川県川崎市で、東京で旅行業に就いていました。業務としては予約、手配だけでなく商品造成などもしていました。協力隊に応募した経緯はというと、まず、仕事の面で、旅行業をしているうちに、お客さんは旅先の観光地で実際は何をしているのだろうかと疑問を抱くようになり、またプレイべートの面では、私自身旅行が好きで、国内旅行で色々な場所に行ってみると、ガイドブックに載ってない素敵な観光地が日本には数多くあることを知り、それらを自分の力で、世にPRできないものかと思い始めたことです。旅行業に就き、旅行好きの先に、観光業に就きたいと思うようになりました。そうして観光業の求人を探していると、各地の観光協会などが多かったのですが、ある時、地域おこし協力隊制度を知り、地域おこし協力隊のフェアや移住フェアに出向くようになり、そこで、協力隊の制度を使って観光業に携われることを知りました。探してみると、ちょうど萩市が観光業で募集していたので、萩を選び応募した次第です。

観光業で募集されていたとは具体的にどんな募集だったのですか?
-配属先は農林振興課(現農政課)で、グリーンツーリズムの振興を主たる業務にするものでした。任期を終えた今でも、はぎまえ698合同会社で引き継ぎ業務に当たっているのですが、萩市ふるさとツーリズム推進協議会の事務局の運営です。事務局での具体的な業務としては農泊の受け入れをしています。

■他県の中学生が市民体育館に集合しているのを見たことがあります。それですよね?
-はい。そうですね。北九州市では1次産業を学ぶという観点から、20年前より中学2年時のカリキュラムにある職場体験でグリーンツーリズムを利用されていました。それを萩に招致したものです。

■なるほど。はぎまえ698は、その業務を引き継ぐために創設したのですね?
農泊は近年、地域の魅力を生かした持続可能なビジネスとしても推進されています。農泊の受け入れ家庭や団体は個人事業主や任意団体が多いので、わずかながらも地域に還元する経済活動をして維持していくためには、法人の設立が有効的だと考えました。ただ、業務は農泊の受け入れだけではなく、体験プログラムを造成し販売することもしますし、地域おこし協力隊時代は萩市広報課に着任していた奥さんが編集・制作事業もしています。

■体験プログラムはどのようなものを造られているのですか?
-現在造成中なのが、むつみ地域を舞台に行うガイド付きサイクリングツアーです。むつみには八千代酒造という酒蔵があり、酒米のとう精工場があり、酒米を作る田園があり、湧き水があり、日本酒を造る全てがあります。また猫寺と呼ばれる雲林寺など、むつみにしかない観光資源があります。それらをガイド付きで電動自転車で回るものです。

■ターゲットはどこになりますか?
-当初はインバウンドを狙っていました。とういのも、萩市ふるさとツーリズム推進協議会で受けている農泊も学生だけでなく、海外から来られる方も多く、昨年は約300人の外国人の方が農泊されました。そして、その方々に感想を聞くと、萩の中心地にある観光名所より、農村風景の方が印象的だったという声が多かったので、日本酒というキーワードも絡めることによって、海外の方が楽しめるコンテンツになると考えています。

■昨年、300人の外国人の方がこの萩で農泊されてたことに驚かされます。どのようなルートで来られるのでしょうか?
-萩に農泊で来られる方は、協議会と契約しているカナダの旅行会社から送客されているものです。その旅行会社が2週間かけて日本を回るツアーを組まれていて、その中の2泊3日は萩の民家にホームステイするようになっています。

■受け入れ体制も気になります。言語の問題とかありますよね?
-最初は無理くりというわけではないですが、「やってみないとわからない」という感じで受け入れてもらいました。最初は不安な方もおられましたが、スマホのアプリを介してコミュニケーションを取ってもらったり、スマホをお持ちでない方には翻訳機のポケトークをお渡しして、やりとりをしてもらっています。今では70代後半のお婆ちゃんが、来られた外国人と家族の話、仕事の話、旅行先の話など、色々な話を聞けて楽しいよと言ってくれるまでになっています。受け入れの家庭の方も、インバウンドのお客さんもストレスなくコミュニケーションを楽しめているようです。受け入れ家庭さんのチャレンジ精神に感謝ですね。

■凄いですね。最後に今後の展望をお聞かせください。
-ガイド付きサイクリングツアー「FURUSATOサイクリング」を事業の一つの柱にしたいので、先ずはむつみコースを自分たちでしっかり作り込んでいきたいなと思います。そうして、萩の中心部やその周辺の三見や明木などで、更にコースを増やしていき、毎日ツアーを組めるようになればと思います。また、これは、協力隊のときのミッションと一貫しているものですが、この萩で「観る観光から体験型の観光を推進する」という役割を担っていけたら本望です。そして、農泊を受け入れてくれる農家の方々の所得増に繋がる確かなものを提供できるようになれば、移住を希望される方にも、就農し、農泊の受け入れでこれだけの副収入がありますよと提示もできますので、移住しやすい土地になるのではないかな、なんて考えています。

■ありがたい話です。引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。