萩の新たな「食の交差点」へ。パン屋「yuQuri」店主が手掛けるナチュールバーガー専門店「en_PELORI.」オープン

2025年12月15日(月)、山口県萩市唐樋町にある札場跡の向かいに、新たな食の風景を刻む一軒の店が誕生しました。店の名前は「PELORI.(ペロリ)」。このユニークで親しみやすい響きを持つお店は、単なる新しい飲食店ではありません。実は、この場所のすぐ近くで10年にわたり愛され続けてきたパン屋「yuQuri(ユクリ)」の店主・中原昌代さんがオーナーを務める、満を持してオープンさせた「ナチュールバーガー」のお店なのです。

「yuQuri」といえば、このエリアで日常に寄り添う「街のパン屋さん」として、長年地域の人々のお腹と心を満たしてきました。パン職人として粉と向き合い、パンを焼き続けてきた10年。中原さんの心の中には、ある一つの想いが静かに、しかし確実に育まれていました。「焼きたてのパンを、一番美味しい温かい状態で食べてほしい」。テイクアウトが主体のパン屋では、どうしても冷めた状態でお客様の口に入ることになります。自分たちが作った一番おいしい瞬間を届けたいというもどかしさと、温かい料理への渇望。長年慣れ親しんだこのバスセンター近くの場所で、その想いを「PELORI.」という形にして結実させたのです。

出店の場所に選んだのは、奇しくも自身がパン屋を営んできたエリアの中心、萩の交通の要衝であった場所の目の前でした。中原さんがこの場所にこだわった理由、それは「札場」という地名が持つ歴史的な意味合いに深く関係しています。かつてここには高札場(掲示板)があり、情報が集まり、旅人が行き交う起点でした。人と人が交差し、情報が交換される場所。そんな土地の記憶を現代に蘇らせ、ハンバーガーを片手に人々が語らい、笑い声が響く、現代の「旅の起点」のような場所にしたい。窓の外に見える札場跡地の風景と重ね合わせながら、中原さんはそんな未来図を描いています。

提供されるのは、ファストフードでもなければ、昨今流行りのグルメバーガーとも一線を画す「ナチュールバーガー」です。この聞き慣れない言葉には、中原さんの料理に対する深い哲学が込められています。イメージの源流にあるのは、デンマーク・コペンハーゲンにあるハンバーガーショップ「POPL(ポプル)」。世界的なレストラン「noma」の姉妹店でもあるその店で提供されるバーガーのように、素材そのものの色や香り、その土地のテロワール(風土)を感じられる「料理としてのハンバーガー」を目指しました。老若男女問わず愛されるハンバーガーという親しみやすいアイコンを使いながら、その中身はフレンチの技法や地元の旬を詰め込んだ一皿に昇華されています。

この壮大なプロジェクトを実現するために結成されたのが「チームPELORI.」です。中原さん一人の力ではなく、山口県内外のプロフェッショナルたちが集結しました。メニュー開発の要となったのは、山口市のフレンチレストランガストロノミーmitsuwaのオーナーシェフ三和慎吾さん。ハンバーガーというカジュアルな商材にフレンチの繊細な技術と構成力を落とし込みました。そして、ナチュールワインのセレクトは宇部市の「CAFÉ 126」、店舗プロデュースやインテリアデザインには県内で活躍する荒木さん、グラフィックデザインは京都の「ウームデザイン」、施工は「かしわ製作所」と、各分野のスペシャリストたちが中原さんの想いに共鳴し、一つのチームとなって店を作り上げました。「yuQuri」で培ってきた人との繋がりが、この新しい店を支える土台となっています。

「PELORI.」の食事スタイルは、ハンバーガーショップとしては異例の「コース仕立て」のような構成になっています。席に着くとまず提供されるのは、フレンチシェフ監修による2種類の前菜です。一つは「しめ鯖のサラダ仕立て」。萩で水揚げされた新鮮な鯖を店内で締め、自家製のリコッタチーズ、リンゴ、ビーツなどを合わせた一皿。鯖の旨味とフルーツの酸味、チーズのコクが複雑に絡み合う、まさにレストランの前菜です。もう一つは「ゼッポリーニと温野菜」。ピザ生地に青のりを練り込んで揚げたイタリアの郷土料理ゼッポリーニに、季節の温野菜を添え、アンチョビソースで味わいます。これらは「ポテト代わり」というにはあまりにも贅沢な、ワインが進む逸品です。

そしてメインとなるハンバーガーは、4種類から選ぶことができます。ここで特筆すべきは、すぐそばにあるパン屋「yuQuri」の真骨頂である「バンズ」の存在です。山口県産小麦「せときらら」を使用し、具材に合わせて4種類の異なるバンズを焼き上げています。パン屋としての技術と経験が、ここで遺憾なく発揮されています。

一つ目は、プレーンな「カンパーニュバンズ」を使用した王道のバーガー。パティには長州和牛のスネ肉を100%使用。あえて粗挽きのスネ肉を使うことで、ステーキを食べているかのような力強い肉の食感と旨味を実現しました。

二つ目は、生地にパプリカを練り込んで焼き上げた鮮やかなオレンジ色のバンズを使用したスパイシーなバーガー。クミンの香りを効かせたバンズに、辛味のある「オニサルサソース」を合わせ、エキゾチックな味わいに仕上げています。

三つ目は、ジャガイモを練り込んだフォカッチャ生地のバーガー。こちらは低温調理した長州どりとたっぷりの野菜を挟んだ、サラダ感覚で楽しめるヘルシーな一品。

そして四つ目は、生地にヒジキを練り込んだ黒いバンズのフィッシュバーガー。萩沖で獲れた魚をフライにし、磯の香りがふわりと広がるバンズで包み込みました。

これらすべてのメニューにおいて貫かれているのは、「ニュー・ノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)」に通じる思想です。その土地で採れたものを、その土地の文化や風土に合わせて調理する。萩という海と山に囲まれた豊かな土地だからこそできる表現を追求しています。ソースやピクルス、チーズに至るまで徹底的に手作りにこだわり、既製品にはない優しさと深みを生み出しています。例えば、サラダに乗せるオリーブ一つとっても、店内で乾燥させて風味を凝縮させるなど、見えない部分にまで膨大な手間がかけられています。

店舗のデザインもまた、「PELORI.」の世界観を形作る重要な要素です。コンセプトは、フランス映画『アメリ』に出てくるカフェのような様々な人が集う温かみのある場所。シックで洗練された空間ではなく、あえて明るくポップな色調を取り入れることで、街角に明かりを灯し、誰もがふらりと立ち寄りたくなるような開放的な空気を演出しています。黄色い扉を開ければ、そこには異国情緒と懐かしさが同居した空間が広がり、デンマークのデザイナーによるスツールなどが配置されたカウンター席が客人を迎えます。将来的にはテーブル席の増設も計画されていますが、現在はスタッフとの距離が近いカウンター席を中心に、調理の音や香りをダイレクトに感じられるライブ感のある営業スタイルをとっています。

ドリンクメニューも料理に負けないこだわりが詰まっています。ワインはナチュール(自然派)を中心に、料理とのペアリングを楽しめるラインナップ。ビールは長門市「365+1BEER」のクラフトビール、コーヒーは「Saï Coffee Roastery」のスペシャルティコーヒー、そして萩ならではの夏みかんジュースなど、生産者の顔が見える、ストーリーのある飲み物が揃えられています。

店名の「PELORI.」には、ボリュームのあるバーガーも、美味しいからこそ「ぺろり」と平らげてしまえる、そんな愛らしい意味も含まれているのかもしれません。「yuQuri」と共に、萩の歴史ある「札場」周辺で新たな食の文化を発信し始めたこの場所。フレンチの技法とパン職人の魂、そして萩のテロワールが融合した「ナチュールバーガー」は、訪れる人々の心とお腹を満たし、この街の新しい日常の風景となっていくことでしょう。ただ美味しいだけではない、作り手たちの情熱と、萩という土地への愛が詰まった一皿が待っています。

 

ナチュールバーガー PELORI.
山口県萩市唐樋町9
営業時間 日~水:11時~19時/金・土:11時~21時
店休日 木曜日を予定
※ご予約優先 (インスタDMもしくは予約フォームから)
インスタグラム https://www.instagram.com/pelori_burger_hagi/
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