■まずは、河村さんのこれまでの歩みをお聞かせください。
河村氏:出身は長門市の飯井です。萩市とのちょうど境目にある集落ですね。小学生の時は汽車で、中学校のときは自転車で三隅まで通っていました。
現在メンタルコーチをしていますが、前職は小学校教員です。教員になろうと思ったきっかけは、大きく分けて2つあります。一つは、高校生の時に灰谷健次郎さんの小説『兎の眼』を読んだことです。あの作品に描かれている教育の在り方に深く感銘を受けました。もう一つは、私が小学校4年生の時の担任だった堀先生という方の影響です。堀先生は他の先生とは少し違った、とても面白い先生で、「先生という仕事はいいな、あんな先生になりたいな」と子供心に憧れを抱いたんです。そうした経験が重なって、高校生の頃には将来は学校の先生になろうと決めていました。
その後、念願かなって小学校の教員となり、子供たちの成長に関わらせていただいていましたが、7年前に退職し、メンタルコーチとして独立。そうして現在、経営者の方や企業、そして個人の方を対象にコーチングを行っています。
■幼い頃からの夢だった教員という安定した職を辞めてまで、なぜコーチングという全く新しい世界へ飛び込もうと思われたのでしょうか。
河村氏:教員として現場に立っている中で、大きな違和感というか、ショックを受けた出来事があったからです。それは子供たちの「夢」に関する変化でした。
小学校低学年の教室で「将来の夢がある人?」と聞くと、ほぼ全員が目を輝かせて「はい!」と元気に手を挙げるんです。ところが、学年が上がっていくにつれて、だんだんとその手が挙がらなくなっていく。高学年になる頃には、夢を語る子が極端に減ってしまうんです。「自分なんてどうせダメだ」「大きな夢を持っても叶わない」と、子供たち自身が自分の可能性を閉ざしてしまっているように感じました。
成長するにつれて夢がしぼんでいくこの現状は、我々大人が行っている教育の結果なのではないか、教育が子供たちの可能性を奪ってしまっているのではないか、と自責の念に駆られました。なんとかしなければいけないという強い問題意識を持っていた時に出会ったのが、アメリカのルー・タイスという方が書いた『アファメーション』という本でした。その本を読んで「これだ!これこそが子供たちに必要な考え方だ」と直感したんです。
そこですぐにコーチングの研修を受けに行きました。1泊2日の研修だったのですが、その最中に「これからはこのコーチングを広めていくことが自分の使命だ」と確信し、その場で「教員を辞めてプロのコーチになる」と決断しました。決断してからは早かったですね。その年の年度始まって直ぐでしたが、校長先生に辞意を伝え、年度末できっぱりと退職しました。
■教員から起業家への転身というのは大きな変化だったと思います。独立当初のご苦労や、現在の活動内容について詳しく教えてください。
河村氏:そうですね。ずっと学校という世界しか知らなかったので、正直なところ「営業」というものをしたことがありませんでした。人脈もゼロからのスタートです。そこで、まずは経営者のマインドを学ぼうと思い、「倫理法人会」に入会しました。そこでの活動を通じて多くの経営者の方々と出会い、少しずつ人脈が広がっていきました。
現在は、主に経営者の方へのエグゼクティブコーチングや、企業の社員研修などをさせていただいています。また、ユニークな取り組みとしては、管理栄養士さんの国家試験対策や就職支援を行っている「ファンスタディ」さんとコラボレーションして、管理栄養士さん向けのコーチング講座を行っています。管理栄養士さんは栄養指導のプロですが、クライアントさんの行動を変容させるためには、知識だけでなく「伝える力」や「相手のやる気を引き出す力」が必要です。そこにコーチングの技術を取り入れることで、より効果的な指導ができるようになるようサポートしています。
■実際にコーチングを受けられた方々には、どのような変化や成果が生まれているのでしょうか。
河村氏:おかげさまで、多くの嬉しい報告をいただいています。経営者の方からは「会社の業績が6倍になった」「個人の売上が3倍に伸びた」といった具体的な数字としての成果を伺うこともありますし、数字以外の面でも大きな変化が生まれています。
例えば、不登校や引きこもりで悩んでいたお子さんが、コーチングを通じて自信を取り戻し、学校に通えるようになったり、就職が決まったりしたケースもあります。様々な悩みを抱えて私のセッションに来られる方も、1時間程度のセッションが終わる頃には、皆さん本当に晴れやかな「100%の笑顔」になって帰っていかれるんです。その表情の変化を見るたびに、コーチングの持つ力の凄さを実感しますし、この仕事をやっていて本当に良かったと思います。
私は「パフォーマンス・エンハンスメント・コーチング」という、ルー・タイス氏が提唱した理論に基づいた手法を用いていますが、これは単なる精神論ではなく、脳の仕組みに基づいた科学的なアプローチです。だからこそ、どんな立場の方であっても、しっかりと結果が出るのだと確信しています。
■年男を迎えられますが、これからの1年、そしてその先の未来に向けてどのようなビジョンを描いていますか。
河村氏:これまでは、自分自身が学び、インプットすることに多くの時間を使ってきましたが、これからはもっと「アウトプット」に力を入れていきたいと考えています。現在は毎日メルマガを書いたり、SNSでの発信を行ったりしていますが、今後はYouTubeなども活用して、より多くの方にコーチングの可能性を伝えていきたいですね。
そして、大きな目標としては「コーチを育てる」ということに注力したいです。私一人でできることには限界がありますが、同じ志を持つコーチが増えれば、より多くの人に影響を与えることができます。
特に、私の原点である「教育現場」にコーチングを還元したいという想いは強く持っています。教員養成課程のカリキュラムにコーチングを導入したり、現職の先生方にコーチングを学んでいただいたりすることで、子供たちの夢を潰すのではなく、心から応援できる先生を増やしていきたい。かつての同僚たちが今、管理職になり始めている年代ですので、そういった繋がりも大切にしながら、山口県、そして日本の教育が良い方向に変わっていく一助になりたいと本気で思っています。
■これからコーチングを学んでみたいと思っている方へ、アドバイスをお願いします。
河村氏:本を読んで学ぶのももちろん良いのですが、ぜひ一度「本物」のコーチングに触れてみてほしいと思います。コーチングはライブ感が大切です。実際に人と対面し(オンラインも含め)、その場の空気感や熱量を感じることで、得られる気づきは桁違いです。
コーチングは経営者だけのものではありません。子育てに悩むお母さんや、部下の育成に悩む上司の方など、人と関わる全ての方に役立つスキルであり、マインドセットです。少しでも興味があれば、私のホームページ(Dream Support coaching)から問い合わせていただいたり、メルマガを読んでいただいたりして、コーチングの世界に触れてみていただければ嬉しいですね。
■最後に、プライベートでの夢や目標についてもお聞かせください。
河村氏:趣味は釣りなのですが、最近はありがたいことに仕事が忙しくてなかなか行けていないんです。なので、時間を作ってゆっくり釣りに行きたいですね(笑)。
それから、何よりも妻への感謝を形にしたいと思っています。私が教員を辞めると言った時、同じく教員である妻は反対するかと思いきや、「あなたが不安定になるなら、その分私が頑張って家計を支えるから、やりたいことをやりなさい」と背中を押してくれました。その言葉があったからこそ、今の私があります。本当に頭が上がりません。
これからは「奥さん孝行」として、一緒に旅行に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、二人の時間を大切にして恩返しをしていきたいですね。
