連載 コラム『むつみ豚と雨女』 第10回

あっという間に3月も下旬になってしまったと言うのに相変わらずの人手不足。求人を出せど人が来ない。
人の心を掴むキャチフレーズとはなんだろう。
今の世の中、出尽くした感はあるがそれでも人は新しい言葉を求めるのだろうか。
小野養豚の求人広告をチラシやSNSでご覧になられた方もおありでしょう。あれはほとんどワタクシが考えている。アイデアは出してもパソコンスキルの無いオバさんなのでキャッチコピーやイメージをIT担当が形にしている。企業として消費者の皆様に伝えたいことは山ほどある。思わず小野養豚で働いてみたくなるようなキャッチコピーを日夜考えているわけだが、なかなか雇用には結びつかない。零細企業なのでびっくりするような給料は出せない。しかし、本当に働きたい職場とは、給料の額だけではないとワタクシは思うのだ。
先日、小野養豚の求人広告を見て、『生きている豚をさばいたりするのでしょう?』との声を頂いた。なんと!ここには消費者と生産者の認識の違いがあったわけだ。
日本には『屠畜場法』という法律があり、決められた設備と資格を持った屠畜場以外で屠殺解体することはできない。これは畜産業では当たり前のことなんだが、なるほど、中には小野養豚でむつみ豚を育て、さばいて、販売していると思っておられる消費者もおるわけだな。ちなみに小野養豚は福岡市の屠畜場を利用している。
豚の平均寿命が10年としたら、食肉用の豚は6ヶ月でその命を終え、ワタクシ達の血となり肉となり、生活の糧となってくれる。農場にいるとそれが日々のこととなり、当たり前になってしまうが、感謝と鎮魂の気持ちを忘れることはない。
決してキレイな仕事ではないがやりがいに溢れる養豚業。
今回はコラム開始以来、今までになく真面目な話になってしまった。それはそれで、なんだか恥ずかしい。