やきとりのまち長門へ移住し、念願の焼き鳥店をオープン! 炭火焼き鳥店「田中家」店主 田中陽一郎さんインタビュー

2019年12月に長門市に移住し、地域おこし協力隊やきとりのまち長門推進事業担当を経て、今年5月19日、長門市東深川に「炭火やきとり 田中家」を新しくオープンした田中陽一郎さんにお話しを聞いてきました。

■ご出身はどちらで、長門へ移住されるまでは、どのような仕事に就かれていたのでしょうか?
-出身は大阪です。通天閣が身近にある下町で育ちました。前職は、阪急電鉄・阪神電鉄の路線駅構内を中心に、スーパーマーケットやコンビニの出店並びに運営、またコインロッカー、自動販売機などを設置する、いわゆるリテール事業を手掛ける会社で管理職をさせていただいていました。

■長門市地域おこし協力隊として移住して来られた経緯をお聞かせください。
-小さい頃は難波、大人になってからは梅田と、「天下の台所」、「食い倒れの街」と言われる場所で長く過ごし、食べ歩くのが趣味でした。また、若い頃から、いつかは焼き鳥店をやりたいなと思っていたのですが、安定したサラリーマン生活を捨ててまで踏み切るには至らず、おぼろげながら「やるなら定年後だろうな」と考え、日々を過ごしていました。しかしながら、自分の年齢が50歳を迎えることが近づくに連れて、人生の残り時間のうちに、自分らしさを発揮し社会に貢献できるものは何だろうか、自分にしかできないもの何だろうかと考えるようになりました。また、仕事の方も、ちょうど大きなプロジェクトを終え、ひとまず一区切りつき、周りを見渡すと部下もしっかり育っていたので、何かを始めるならこのタイミングではないかと思うようになりました。当初は、大阪で出店を考えていましたが、ふとした時、後継者が居らず悩んでいる焼き鳥店が結構おられるのではないか、また新規でお店を出店するよりも、事業継承する方が、地域貢献にも繋がるのではないかと思いつきました。そこで「焼き鳥 後継者」でネット検索してみたところ、長門市地域おこし協力隊やきとりのまち長門推進事業担当の募集が検索結果に出てきて、その内容を見ると自分がやろうしていたことと合致しており、自分に声を掛けられているような感覚になりました。とはいえ、長門市に訪れたこともなく、どのような町なのかも知らないので、応募しようかどうか悩み、長門市のことを色々と調べるにつれて、一度行ってみないとわからないなと思い、2019年9月、地域おこし協力隊の面接も兼ね、初めて長門市に訪れました。訪れてみると、自然が豊かで、海と山と町との距離が近く、ギュッと詰まっていること、そして食べ物が美味しいことにも感動しました。何よりも、養鶏業との距離感が近く、朝捌かれた鶏肉を、昼にお店で串打ちし、夕方にはお客様に提供できるといった全国的にも珍しい長門ならではの環境に大変魅力を感じました。その後、地域おこし協力隊の採用が決まり、同11月に前職を退職、翌12月に長門に移り住み、やきとりのまち長門推進事業担当に就任いたしました。

■何とも運命を感じる出会いですね。やきとりのまち長門推進事業担当に就任してからは、どのような活動をされていましたか?
-取り組んだ事業としては、主に情報発信となります。長門の焼き鳥文化や歴史などを調べ、ガイドブックを作成。また、コロナ禍ということもあり、ご家庭で焼き鳥を楽しんでいただけるよう、下ごしらえ、串打ち、そして焼きの動画をYouTubeにて配信もしました。加えて、地元小学校へ焼き鳥の授業に出向いたりするほか、リサーチも兼ね地元で開催されるイベントへ出店やセミナーなども開催させていただきました。何よりも有難かったのは、やきとりのまち長門推進事業には、焼きとりやちくぜん総本店など4店舗を経営される株式会社Homeyさんが中間支援団体として協力してくださっており、任期中にも、店舗で焼き鳥の技術を身に付けさせていただきながら、経営の方も学ぶことができたことです。

■地域おこし協力隊の任期は3年ですが、就任後約1年半で出店となったのは何故でしょうか?
-元々、移住後2~3年以内には起業しようとは考えていました。きっかけとなったのは、現在「田中家」がある店舗にあった「焼とりや ちくぜん」が、コロナ禍により昨年3月に閉店したことでした。その後、「ここのお店を使わないか」とお声がけいただきました。私がやらなくても、居酒屋などが入るのだろうなと思うと、長門市の焼き鳥店が1軒少なくなるのは淋しい…、いや、この話をお断りしたら自分は何のために長門に来たのか、今やらないでいつやるのかと自問自答し、この場所で出店することを決めました。出店を決めてからは、地域おこし協力隊の活動をしながら、空いた時間に掃除をし、先ほどお伝えしたセミナーを、この場所で6回ほど行い、長門市の焼き鳥の歴史や特徴などの情報を集めつつ、試食会を開き、都度アンケートを取り、ニーズをチェックしながら出店へ向けての準備を進めさせていただきました。そうして、今年の5月に入り、本格的な改装を行い、5月19日、晴れて念願の焼き鳥店をオープンすることができました。

■「田中家」のコンセプトや特徴をお教えいただけますか?
-店名のタナカヤのヤを家と表記しているようにアットホームな感じで、気軽に利用してもらえるお店でありたいです。そのためにお客様を迎える側として「一座建立」をモットーとしており、お店Tシャツの胸にも入れています。「一座建立」とは、茶道で使われる言葉で、招いた側と招かれた客の心が通い合い、気持ちのよい状態が生まれることを言います。そのような空間、時間を提供できるよう一生懸命焼きますし、出来る限りのサービスでおもてなしし、私や従業員だけでなくお客も幸せになれるお店を目指しています。
メニューの方は、朝捌かれた長州どりを新鮮なまま炭火焼で提供する焼き鳥メニューに、美味しい空気の中育った地元野菜を使った野菜串、日本海で獲れた新鮮な魚の炭火焼きに加え、オリジナルサラダなど、地元の食材にこだわり提供しています。また焼き鳥のタレも地元大津醤油に、長門で製造される黒砂糖、お隣萩産の果物など、地元の食材にこだわっています。ドリンクメニューは地元のお酒から、近隣では珍しい銘柄のお酒に加え、田中家特製のオリジナルのチューハイやソフトドリンクも用意しており、焼き鳥と一緒にお楽しみいただけると思います。

■まだオープンしたばかりですが、今後の展望をお聞かせください。
念願の焼き鳥店をこの長門市で出店するにあたって、協力隊時代、出会うことができた方々、協力してくださった皆さまへの感謝を、この店で表現していきたいです。まずは地元の方々に親しみを持ってもらえるお店にしなければと思います。また、大阪にいた頃はステークホルダーの存在を深く意識することはなかったのですが、お客様、仕入先様、色々なところで支えて下さっている方々、従業員との関係も大切にしながら営業していきたいなと思います。辿り着けるかはわかりませんが、最終的には長門の焼き鳥文化を広く全国に発信できるお店になれればと考えています。

■ありがとうございました。

炭火やきとり 田中家
〒759-4101 長門市東深川正明市864-1
℡ 0837-27-0505
営業時間 17時~22時
定休日 水曜日