連載 コラム『むつみ豚と雨女』 第16回

引っ越しの多い人生を歩んできた。親が転勤族なわけでもないのに大小合わせると12回の引っ越し。おかげで20代の頃は引っ越し貧乏だった。
この春これが最後になるであろう12回目の引っ越しをした。引っ越しとはもの凄いエネルギーを必要とする作業である。荷物の片付け、梱包から運搬。新居で必要な物の購入。電気ガス水道の閉栓開栓。う〜ん、よく12回もやってきたな。
いよいよ終の住処となる家を建てたわけだが、周りの友人知人がマイホームを建てていた30代前半ごろ、すっかりタイミングを逃してしまい、やっと建てたのは40歳過ぎてから。よく、家は三回建てないと理想の家にならない、と言いますね。そんなの建築業界の陰謀だ!なんて思ってたら、あながち間違いとも言えない。住んでみて初めて『ここはこうすれば良かった』てとこが無くもない。しかし、本当に三回建てられる財力をお持ちの方は良いが、ワタクシなんぞ、一回建てるだけでヒーヒー言ってる。一回しか建てられないからこそ全力投球するんだ。ワタクシが思うに、三回建てたらそれはそれは理想的な家になるんだろうけど、きっと無難な家になるんだろうな。
建築完了は昨年の12月なのに結局のところ引っ越したのは今年の5月。所謂、燃え尽き症候群てヤツですね。建てるのにエネルギーを使い果たし、寒さや多忙さを言い訳にズルズルと春になったわけだ。
引っ越しのたびに潔く捨ててきた。時には人間関係も。物は物、思い出は思い出。あまり迷わずバッサバッサと捨てられる性分なので物が溢れて困るってことは無いが、どうしても捨てられない物がある。18歳の長男が生まれた時に買った赤ちゃん用の爪切り。これが巻き爪に悩まされるワタクシの爪切りにぴったり。