萩市の静かな明木地区に、時間を忘れて過ごせる特別な場所があります。かつての「重富呉服店」が、宿とカフェを併設した「重富文化堂」として生まれ変わりました。古民家の温もりと洗練された感性が融合したこの空間は、訪れる人々を優しく迎え入れ、地域に新たな魅力を加えています。
この場所の再生を手がけたのは、同じく明木地区に人気店リストラン&カフェ彦六又十郎を構える岡本智之さん。当初は倉庫用の物件を探していたところ、重富呉服店跡の建物が持つ歴史と佇まいに魅力を感じ、もっと多くの人に明木地区の良さを知ってほしいという想いから、物置にするのではなく、宿としての活用を決意しました。萩市街地だけでなく、この地域ならではのゆったりとした時間を体験してもらいたい、そのための拠点が必要だと考えたのです。約1年の準備期間を経て、気軽に立ち寄れるカフェも備えた「重富文化堂」が誕生しました。
店内に一歩足を踏み入れると、和洋折衷の独特な世界が広がります。岡本さんがテーマとする「雑種な文化」が体現され、大正ロマンを感じさせる家具や照明、シノワズリーの調度品などが、古民家の落ち着いた雰囲気と見事に調和しています。
ひときわ存在感を放つのは、壁にはめ込まれたステンドグラス。遠く四国の教会で使われていたものが、縁あってこの地へやってきました。長い年月を経てきたガラスを通す光が、空間に柔らかな彩りを添えています。
また、ミシン台をリメイクしたテーブルなど、建物の記憶を大切にする設えも随所に見られ、訪れる人の心に深く響きます。
週末の金・土・日曜日は、カフェとして営業。オリジナルブレンドされた香り高いコーヒーとともに、自家製の焼き菓子やチーズケーキ、人気のカヌレなどを味わえます。特にバケットサンドは、しっかりとした料理が挟まれ、食べ応えも十分。「彦六又十郎」とは異なるメニューが用意されており、ここでしか出会えない味を楽しむことができます。
「重富文化堂」のもう一つの顔は、宿泊施設。現在は準備中ですが、将来的には予約サイトを通じて宿泊客を受け入れる予定です。「この宿を拠点に明木地区を深く知り、好きになってもらいたい。そして移住や地域との新しい関わりのきっかけになれば」と岡本さんは語ります。カフェでのひとときとはまた違う、地域に溶け込むような滞在が期待できそうです。
ここは単なる店ではありません。明木地区の活性化、関係人口の増加、そしてスタッフの成長を願う、地域の未来を見据えた場所なのです。古き良きものを尊重し、新しい風を吹き込む「重富文化堂」。明木地区を訪れた際には、ぜひ立ち寄り、その温かくも刺激的な空気に触れてみてください。きっと、心に残るひとときを過ごせるはずです。
重富文化堂
萩市明木3244
☎ 090-8936-3244
カフェ営業時間 金・土・日曜日 11:00~17:00
定休日 月・火・水・木曜日