焼き抜き蒲鉾を次世代へ 忠小兵衛蒲鉾リニューアルオープン!

安政2年(1855年)創業と、萩市で最も古い老舗の蒲鉾店であり、明治時代には山口県の伝統的な蒲鉾の製法として知られる「焼き抜き製法」を誕生させた忠小兵衛蒲鉾本店が、その伝統を次の世代へ繋いでいけるよう、新たなブランドを立ち上げると共に、店舗も改装され、この7月4日(日)にリニューアルオープンされます。
この度の北浦うぇぶでは、忠小兵衛蒲鉾の製造を担う八代目当主・長谷朗(あきら)さんと、販売を担う朗さんの姉夫婦・田中真司(まさし)さん、麻依子さんに、お話しを聞いてきました。

■この度の新ブランド立ち上げ、またそれに伴い店舗をリニューアルされた経緯をお聞かせください。

麻依子さん
-先代である父が早くに亡くなり、当代を朗が継ぐまで、祖母と母が、職人さんと共に、伝統ある忠小兵衛蒲鉾を守ってくれていました。社会人となり、祖母と母を少しでも支えることができればと店頭に立ち、その数年後に朗も伝統の味を継承するために工場の方に入りました。店頭でお客さまとお話しさせてもらっていると先代の話を聞くことが多く、店の前を通ったら「ちょっとおいで」と天ぷらをくれていたとお聞きし、お客様の思い出の中に忠小兵衛があるのだなと感じました。そして、そのような思い出話をお客さまから、そのお子さん、お孫さんが聞いて来店してくださる。当たり前ですが、お客様も世代交代していて、世代が変わっても、お客様の思い出にあり続けれるよう、歴史あるこの忠小兵衛蒲鉾を守っていかなければという強い思いが根幹にありました。とはいえ、全国的にも蒲鉾の消費量は年々少しずつですが減り、特に若い世代の蒲鉾離れが進んでいましたので、いかにして若い世代にも蒲鉾を手に取ってもらえるのかを考える必要がありました。そうして、開発したのが、萩かまバーガーと萩かまロールです。

真司さん
-当初は、イベントなどで提供する限定的な商品だったのですが、お昼のレパートリーを増やしたいというお声をいただき、萩かまバーガー、萩かまロールをテイクアウト商品として店舗で提供を開始し、昨年の緊急事態宣言により学校が休校となっていた時期は、働くお母さんの助けにもなればと配達もさせていただきました。もちろんコロナ禍により経営は大変でしたが、お客様が喜んでいただける商品をどのようにコロナ禍で届けることができるのか萩ビズにご相談させていただきました。萩ビズでは、SNSの発信のやり方や、以前より想いであった店舗改装を実現するために商工会議所の方と連携しサポートしてくださいました。
昨年の5月にキヌヤ菊が浜店の松尾さんに、コロナ禍で困っている飲食店のために企画されたイベントにお声掛けいただき、それがきっかけで地元農家さんや、他事業者さんと関わらせていただくことができ、松尾さんの「地元の良いものを消失させず、次の世代にも残していけるようにその魅力を発信していきたい」というお考えに共感し集まった仲間のご協力のもと、この度の新ブランド「はちのたね」の立ち上げに向かうこととなりました。

■新ブランド「はちのたね」のコンセプトをお教えください。

麻依子さん
-自分たちが手掛けることの一つ一つが種になり、お客様と繋がることで芽吹き、共に豊かになることをイメージしています。今を生きる人たちに、蒲鉾の魅力を届けることによって、蒲鉾を思い出のワンシーンの中に刻んでいただくことができれば、次の世代にも蒲鉾を残していくことができる。その種まきをさせていただきたいなという思いを込めています。

■この度のリニューアルでは、具体的にどのような変更がありますか?

朗さん
-萩かまバーガー、萩かまロールをご購入された方の中には、わずかにある店内の椅子でイートインされる方が少なくありませんでした。加えてイートインされる方の多くは店舗前の自動販売機で飲み物を買われていましたので、もっとくつろいでいただけるよう、イートインスペースを充実させつつ、ドリンクを提供できるようにしました。また、昔ながらの炭焼きスペースを活かし、小さなお子さまが本格的な焼き抜き蒲鉾を楽しんでいただけるようなスペースも設けました。

麻依子さん
-メニューの方は、萩かまバーガー、萩かまロールの他、こだわりの野菜を使った蒲鉾のコロッケなどの総菜や蒲鉾のスープなど、蒲鉾の美味しさが引き立つように少し手を加えた商品も提供していきます。バーガーでは、ベーカリーのyuQuriさんとコラボして、週替わりで色々な味を楽しめる【はちのたねバーガー】の提供が決まり、現在、炭焼き蒲鉾を使った高級贅沢バーガーなども考案しています。お父さんにもお母さんにもお子さんにも楽しんでもらえることを想像しながら、色々と商品を提供していきたいなと思います。

真司さん
-コーヒーにもこだわっています。私の同級生が人生を変えてくれたコーヒーと出会い、自分も人の人生を変えれるようなコーヒーを広めたいと脱サラして修行し、地元熊本でコーヒーショップを経営しているのですが、そのコンセプトと、「はちのたね」のコンセプトに通ずるところがあり、彼にお願いして「はちのたね」オリジナルブレンドをローストしれたものを提供させていただきます。また、萩らしいスカッシュやお子さま用ドリンクなども用意させていただき、限定販売になりますが、お口直しに、うふふごはんさんが作るスイーツも提供いたします。

■色々な事業者さんとのコラボが魅力の一つでもありますね!それでは、新ブランド立ち上げ、リニューアルオープンに向けての心境や意気込みをお聞かせください。

朗さん-
八代目として、先ずは代々引き継いできた忠小兵衛蒲鉾の味を守っていくこと。その上で、新ブランドで売り出していく新しいメニューの味も忠小兵衛蒲鉾らしさを損なせず、今までにない感覚を打ち出していければと思います。そうして、若い人たちに蒲鉾の良さだけでなく、伝統的な蒲鉾製造をも広く知ってもらえるよう日々努めていきたいなと思います。
真司さん-150年以上も続く老舗の蒲鉾店を継承していくうえで、代々、見えないプレッシャーや苦悩は必ずあったかと思います。お義母さんも、八代目の朗くんも、麻依子も、その重圧を少なからず抱えているはずなので、他所から移住してきた私が、その肩の荷を少しでも軽くできればと思っています。良い意味で、長い歴史にアクセントを添えることができる存在になり、新ブランド「はちのたね」が持つ、明るい感じのテイストを多くの人に伝えていきたいです。

麻依子さん
-祖母、父母、そして職人さんたちを側で見てきたうえで、私たち世代に何ができるかを考えてきました。八代目を引継いでくれた朗がいて、そして共に歩んでくれる真司さんが新しい風を運んでくれました。しかし、それだけでは、この度の新展開へとは向かいませんでした。萩ビスセンター長の獅子野さん、キヌヤ菊ヶ浜店の松尾さん、そして「はちのたね」のブランディングをサポートしていただいているヨシダキカクの吉田さん、デザイナーの仁科さん、長富さん、コラボしてくださるyuQuriさん、料理家の優さん、梅地ファームの梅地さん、ミノルファームの細田さん、うふふごはんさん、また商工会議所にもアドバイスをいただき、本当に色々な方との出会いがあり、ご協力があってリニューアルオープンを迎えることができ、とてもありがたく思っています。支えてくださる皆さまへ感謝の念を忘れず、その期待に応えられるよう「はちのたね」というブランドを広め、萩の蒲鉾の美味しさを多くの人に知ってもらえるよう頑張ります。不安もありますが、皆で力を合わせ、八代目らしさを作っていくことを楽しんでいきたいなと思います。

忠小兵衛蒲鉾本店

〒758-0061 萩市椿陣ヶ原2757-1
℡ 0838-22-0457
営業時間 10時~18時30分(ラストオーダー18時)
定休日 火曜日、水曜日