萩市、長門市、下関市でコンビニエンスストア(ローソン)経営を展開する㈱井上商事と、主にいちごを扱い、他に甘夏みかんやイチジクなどの果物やズッキーニなどの野菜を栽培、販売している榎谷農園(萩市)がタッグを組み、地元の野菜、果物をコンビニエンスストアで販売するといった中四国では初となる事業に着手しています。
今回の北浦うぇぶでは、㈱井上商事代表取締役・井上雅之さんと榎谷農園運営責任者・榎谷紘司さんにお話しを聞いてきました。
■昨今、コンビニエンスストアでも野菜や果物を販売されているかと思いますが、この度の事業は中四国で初だと聞きました。どのあたりが初で、どのような特長があるのでしょうか?
井上-今までも、ローソンではカット野菜やバナナなどの販売はしていましたが、それらは全て本部が仕入れ、ローソンの流通を使った本部で一括管理されたもので、決して鮮度の高い商品とは言えないものでした。また流通コストなども価格に入っていましたので、スーパーなどの量販店に比べ割高になっていました。そこで、地元の農家、八百屋と提携することで、採れたての青果物を、スーパーと変わらない値段で購入できるようになれば、お客さんにも喜ばれ、地元農家の方にも新しい販売チャネルを提供できるといったものです。
■確かに、大手コンビニエンスストアで売っている青果物は、地元農家が生産したものではないですね。地元で生産された青果物を販売しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?
井上-コンビニエンスストアで販売する商品の大多数は他地域で生産されているもので、少しでも地元の商品を販売できればと元より考えていました。以前、北浦うぇぶでも紹介していただきましたが、村田蒲鉾の商品などを取り扱わせてもらっているのも、同じ思いからです。また、この地元農家・八百屋と提携して地元青果物をコンビニエンスストアで販売するといった事業は、既に九州地方で展開されており、その仕掛け人である㈲高上青果さんから昨年の9月あたりに話を聞いていたのも大きなきっかけです。そこで、面識のある榎谷さんに相談したところ、やってみましょうと快く引き受けてくださり、スタートすることができました。
■井上さんに話を持ち掛けられ、榎谷さんはどのようにお考えになられたのでしょうか?
榎谷-コロナ禍により外食する機会が減り、それまで自炊していなかった方々が家で料理をされることが増え、地元野菜の需要が高くなってきたところがありましたが、それでもスーパーに野菜を買いにいかれる層は限られていましたので、新たな購買層の掘り起こしに繋がるのではないかと感じました。若年層はスーパーよりコンビニの方が身近なものですし、24時間営業されているので、スーパーの営業時間に買い物に行けない方々にも地元青果物を手に取ってもらえるのではと期待が膨らみました。また、農家の目線では、販売チャネルが増えることで、収穫した全ての青果物を市場に出さずに済み、市場価格、収入の安定化に繋がるという利点もあるなと考えました。元々コンビニの駐車場で朝市ができれば面白そうだなと考えてもいましたので、お話しをいただけたときは、とても嬉しかったです。
■事業をスタートして2週間が経ちました。手応えはいかがでしょうか?
榎谷-(3月24日)現在、ローソン椿東平方店と萩市役所前店に卸させていただいておりますが、店舗によって売れるアイテムが違うなというのと、曜日によって売れ行きが店舗によって違うという気付きがありました。椿東平方店の方では、週末、いちごが多く売れましたが、萩市役所前店では平日の売れ行きが良く、利用されるお客さんの層の違いを感じました。データを細かに取っていき、各店舗のニーズにあったアイテムを置いていけるようにしたいと思います。あと、電子マネーの利用者が多いことも実感しました。スーパーや直売所でもクレジットカードは使えますが、コンビニは様々な電子決済に対応されているので、店頭に立たせてもらい電子決済の普及が進んでいることを感じましたし、電子決済を主に生活されている方に地元野菜を手に取ってもらえる機会となるなと感じました。
井上-まだまだ認知度が低いなというのが正直なところです。プロモーションとして、テントを設置し、榎谷さんに立って販売してもらったときは凄く売れるのですが、店内の販売コーナーだけだと売上は激減してしまいます。店内に陳列すると、やはり今までのコンビニエンスストアで販売されている野菜、果物という固定観念が消えないのだろうなと感じています。
■今後の展望をお聞かせください。
榎谷-椿東平方店では観光客も多いようですので、夏みかんのシーズンになれば、夏みかんをネットに詰めて販売したいなと思いますし、青果物だけでなく花卉なども置いていきたいなと思います。萩市はお墓が近いというところもあり、早朝に墓参りされる方にお供え花などの需要もあるのではないかと考えています。また、地元の野菜をメインにしながらも、スーパーでも置いてあるかな?というような、ちょっと変わった野菜も少しだけ入れていきたいです。コンビニに寄って「今日は何が置いてあるかな?」と棚を見てみる楽しみもお届けしたいなと思います。
井上-全国でコンビニエンスストアのスーパーマーケット化が進んでいます。人口減少地域では、スーパーや量販店が撤退する事例は少なくなく、地域住民の生活を支えるため、コンビニエンスストアの役割は日に日に増しています。現在、弊社が運営する6店舗のうち、萩市内4店舗は榎谷農園さんのご協力で地元野菜を販売することになりましたが、大津三隅店(長門)、豊北阿川店(下関)でも、地元農家、八百屋の方と提携を結び、展開し、地域に貢献できればと考えています。
■ありがとうございました。