北浦の公立中学校部活動地域移行の今!

2022年12月、スポーツ庁と文化庁が策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」に基づき、2023年度から2025年度までの3年間を「部活動改革推進期間」とし、全国各市町村で段階的な地域移行に取り組まれています。そして、その在り方は、地域性・地域差が考慮され、全国一律のものではなく、各自治体に委ねられる形で進められてます。今回の北浦うぇぶでは、阿武町、長門市、萩市の部活動地域移行への取り組み、現状、課題、スケジュール等をそれぞれの担当セクションに聞いてきました。

阿武町教育委員会 社会教育係

■これまでの取り組みをお聞かせください。
-2024年3月に学校、PTA、地域スポーツ団体の代表者の皆さまにお集まりいただき「阿武町部活動の地域移行推進協議会」を開催しました。そこでは、近隣市町などの実情に照らし合わせた、阿武町における中学校の部活動地域移行に向けた方針を策定しました。その後、アンケートの結果やスポ少とのつながり、中学校の部活動とのつながり、指導者の確保など様々な要因を考慮して、地域クラブとして何を設立すればよいかを検討し、2026年度4月から休日の部活動を終了、同9月から部活動の完全終了というスケジュールに合わせ動いているところになります。

■現状をお聞かせください。また、課題のようなものがありましたら併せてお聞かせください。
-地域クラブとして、バレーボールクラブ、卓球クラブ、ダンスクラブの3つを設立する予定でです。この3つのクラブについては、指導者の確保やコーチ資格の取得についてもある程度目途がついてきたため、実際の設立に向けて動き始めています。また、現在すでに、中学校部活動とは別に、ABU柔道クラブスポーツ少年団とバンブーFCの民間団体が阿武中学校の生徒を受け入れられていますので、それらの団体にも今後も中学生の活動の場の一つとして活躍していただければと考えています。

■今後のスケジュールをお教えください。
-バレーボール、卓球、ダンスの3つの地域クラブは、2026年度秋の設立を目指してますが、準備ができ次第、順次地域クラブへと移行していく予定です。

■ありがとうございました。

長門市観光スポーツ文化部 スポーツ文化交流課 部活動地域移行準備室

■これまでの取り組みをお聞かせください。
-2022年12月にガイドラインが策定され、翌2023年1月に推進協議会を設立し、本格的に準備を開始ました。長門市では、近年、少子化により各中学校単位での部活存続が困難となってきている中、全国的に部活動改革が始まったことは、これまでの体制を変える大きなチャンスだと捉えました。というのも、本市には5つの中学校があり、深川中は10種類から部活動種目選択ができますが、三隅中、日置中、菱海中は2~3種類、仙崎中は6種類の種目選択肢に限られており、市内で格差が生じている状況でした。また、団体競技においては人数が少なく合同チーム編成や活動内容が制限されることも頻繁に見られるようになりました。加えて、学校教員の働き方改革の推進も求められています。
そこで、長門市では、市内の部活動をまとめて、学校間をバス移動することにより共通の種目選択肢を確保し、平日・休日ともにスポーツ・文化芸術活動に親しめる環境を構築することとして、市営の地域クラブ「NAGATOスポーツ・カルチャークラブ」(通称Nクラ)を2025年8月に設立し運営を開始するとして取組みを開始しました。

■多くの市町村が2026年度の夏を目途に進められている中、1年早いことに驚かされますし、何よりも市営で既存の部活動を纏められるところにも驚かされます。
-地域性といいますか、5つの中学校の位置関係や規模が大きく関係しています。Nクラの活動場所の核となる深川中が長門市の中心にあり、周辺校からはスクールバスや業者借上げバスなどを使い30分以内に移動できるメリットを活かし、周辺校の生徒はこれまで部活動では選択できなかった種目にチャレンジできるようになります。何よりも、これから長門市に生まれ育つ子供たちに、部活動がなくなっても、スポーツ・文化芸術活動に親しめる環境を持続させていきたいという、市民の思いと理解があるからこそスピーディーに形にできたと思います。

■5ヵ月後にはスタートを迎える現段階で、課題となるものがあるとすれば何でしょうか?
-事前準備としては最善を尽くしていますが、スタートしてみて初めてわかる事もあろうかと思います。その中でも、指導いただく方の人数確保や体制整備、大会出場のための登録関係、移動も含めた運営体制や費用負担など、想定はしていても分からないところがありますが、参加者、指導者、市民の皆さまのご理解とご協力を頂きながら、様々な課題を改善し、本市の中学生が持続的にスポーツ・文化芸術に親しめる環境を構築していきたいと考えています。

■ありがとうございました。

萩市教育委員会 学校教育課 部活動改革推進室

■これまでの取り組みをお聞かせください。
-2023年度は地域クラブ活動への移行に向けて、スポーツ分野においては、陸上競技、ソフトボール、サッカーを先行的に取り組む種目とし、協会や連盟などと協議を進め、文化・芸術分野においては、生け花、茶道、合唱を試行的に取り組む活動に指定しました。
2024年度になり、各競技団体等と協議を重ねながら、新たな地域クラブの開設を検討しました。と言いますのも、種目、ジャンルによって、既に民間クラブや組織があり、その中でも営利団体、非営利団体と別れ、非営利でもNPO法人で本格的に運営されているところもあれば、スポーツ少年団やサークルのような任意組織として活動されているところもあります。その属性は様々なもので、部活動の地域移行を一緒くたに出来ないところがあります。また、萩市は広域ということもあり、子ども達の移動の事も考えると1種目1ヵ所でとはいきません。該当する児童生徒やその保護者の方を対象としたアンケートでは、地域ごとに求められるもの、子どもたちのモチベーションの差など、受け皿となるものは多様性に富んだものであってほしいという旨の要望が多くありました。そうして、今年1月に開催した第9回萩市部活動改革推進会議では、「地域移行から地域展開へ」という方向性を示し、包括的にスポーツ・文化芸術活動に親しめる環境を構築していくべく、様々な属性のクラブや活動を増やしていくことを目指した「HAGI☆STAR PROGRAM(仮称)」を展開していくことが決まりました。

■「HAGI☆STAR PROGRAM(仮称)」とは、具体的にどのようなものでしょうか?
-端的に説明すると、今まで部活動にあったものだけでなく、部活動に無かった新種目や活動、気軽に楽しめる体験など、多様な環境を確保し、ニーズにあった場を地域全体で提供していくプログラムとなります。有難いことに、萩市には多くのスポーツリーダーや文化芸術活動をされている方がおられます。また、子供たちのためならと新たにアクションを起こしてくださる方もおられます。それらの方と連携を取りながら、「HAGI☆STAR PROGRAM」という枠組みの中で共に地域をサポートしていきたいと考えています。

■課題があるとすれば、どのようなものでしょうか?
-多くの課題があると認識していますが、一つに、それぞれのクラブや活動団体が持続可能に運営してもらうための支援の方法や費用負担等の検討です。
令和5年度より、萩市が受託している、実証事業の方針でも、受益者負担と公的負担のバランスを考えながらコンセンサスを進めていくとされています。
また、財源イコールお金という捉え方ではなく、「ヒト」や「モノ」などもっと広く捉える必要があるのではないかと感じています。そのうえで、企業や大学等との良好な連携が必要になるのではないかとも認識しています。
現在、国においても令和8年度(推進期間移行)の制度設計について議論を進めているところであり、令和7年の夏ごろに具体的なことが示されると認識しています。

■今後のスケジュールを教えてください。
-先ほどにもお伝えしたように、2025年度は「HAGI☆STAR PROGRAM(仮称)」に内包できる新たなクラブや体験活動などの創設を模索し、クラブ化したところから平日も含めた移行を種目ごとに検討していきます。また、2026年の4月から既存の中学校部活動は休日活動を全て終了し、同8月から全ての中学部活動が終了することを目指し引き続き、取組んでまいります。

■ありがとうございました。