連載 むつみ豚と雨女vol.52

あなたの知らない養豚の世界。豚の妊娠期間は4か月、一度に10頭~15頭のこどもを産む。仔豚は頭から先に出る子もいれば。足から先に出る子もいる。

ワタクシが担当しているのは分娩舎と呼ばれる、お母さん豚と仔豚が1ヶ月ほど過ごすところ。社長のお母様つまり姑と二人でお世話している。

さて6月下旬から7月半ばにかけてむつみ豚の出産ラッシュが続いている。多い日には1日に4頭のお母さん豚の分娩があり、お母さん豚がそれぞれ10頭以上産むもんだから仔豚だけでも1日に40頭以上!てんやわんやの分娩舎。しかもやたらと初産のお母さんが多いもんで分娩舎は緊張感が漂う。ベテランのお母さん豚は短時間で上手に産むけど、初めての出産はドキドキします。
むつみ豚は交配的に多産系ではないけど、それでも15頭以上産まれてしまうとお母さん豚のおっぱいが足りずに育てられない。そんなときは同じ頃に産まれた産子数の少ない他のお母さん豚のところに里子に出す。

分娩舎は設備が豚の体高に合わせてあるので丁度ワタクシの膝の高さくらいに柵があったり、給水口があったり。おかげで足元をろくに見ずにドカドカ歩くワタクシの膝下はいつも青あざだらけ。サッカーのレガース付けようかと思うくらい。

SNSにうちのかわいいフレンチブルドッグの『まなぶ君』を載せると可愛いですね~なんてコメント頂いたりするのだが、産まれたての仔豚を載せると『殺して食べるんやろ』などのコメントが一定数はある。養豚をはじめ牛も鶏も畜産業として確立されている。そもそも畜産業とは本来人間が食べないもの(草や葉っぱ、穀類、食品残渣)を家畜に与え人間が食べられるもの(肉・乳製品・卵)に変換させる仕事。人の価値観はそれぞれなので否定も肯定もしないが、価値観の押しつけはご勘弁願いたい。