至誠館大学新学長・野村興兒氏インタビュー!

 

この北浦で唯一の4年生大学・至誠館大学。その学長にこの4月から就任された前萩市長・野村興兒氏。19年前、市長任期時に開学された旧萩国際大学の設立の経緯から、学長就任の経緯、そしてこれからの至誠館大学の展望等聞いてきました。

■先ずは就任おめでとうございます。早速ですが、学長になられた経緯をお教えいただけますか?
-今年の2月に現理事長・菅原氏から、学長をやってほしいという旨のお手紙をいただきました。そこには吉田松陰先生の研究を是非とも書かれておりまして、そこに大きく心を動かされました。歴史文化豊かな自治体に存在する大学の多くは、地元の歴史や文化を研究する講座があるものです。幕末維新で活躍し、我が国の近代化に貢献した志士を輩出した山口県の各大学には、そのような講座がないことに以前より心を痛めておりました。
また、平成11年、萩市や山口県の支援により萩国際大学が設立され、その後の19年間の経緯を知るものとして、市長とは違う立場で、この萩市のために貢献させてもらえるのならと引き受けさせていただきました。

■そういえば、前身の更に前身の萩国際大学は市長時代に設立された大学でした。設立時には色々あったとお聞きしますが…
-そうですね。遡れば半世紀前、明治維新100年を記念して行政では萩市民館を、民間では学校法人萩学園が萩女子短期大学を設立しました。その後、萩女子短期大学は市外から多くの学生が集まる女子短大となり、卒業後、そのまま萩市に残り、勤められる方、嫁がれる方もいて、地域社会に大きく貢献いただきました。
1990年代には、企業誘致より大学誘致のほうが地域再生に繋がると全国的に盛り上がり、文部科学省(当時は文部省)も乗りに乗っていまして500ほどの地方自治体が大学設置申請を出すほど、熾烈な競争が繰り広げられていました。学校法人萩学園も短大だけではなく4年生大学をと、お隣益田市と話を進められていたのですが、途中で益田市が方針を変え、突如この萩市に4年生大学設立の話が舞い降りてききました。萩の経済界をあげてこの千載一遇のチャンスをものにしようと機運が高まっていたこともあり、市民の理解を求めるよう努めていたのですが、県の支援の方向も決まり、萩市としても「やるからにはちゃんとやろう」の決意の下、努めて参りました。その後、ご存知のとおり紆余曲折ありましたが、現在、安定した大学運営に努力を重ねているところです。

■今年は本校と東京サテライト校合わせて308人入学と数年前に比べ経営は改善されつつあるかと思いますが、まだまだ課題は山積しているかと思います。その課題解決のため、どのようなことを取り組んでいこうとお考えですか?
-先ずは経営の安定化に向けて、過去からの努力が実を結ぶよう、本校の魅力を高める必要があると考えます。
ひとつは、下関市から鳥取市まで日本海側では4年生私立大は至誠館大学だけで、この立地上の特色を大いに活かすべきと考えます。また萩地域においては、大好きな地元で高等教育を受けれる、自宅から通学できるということは本来なら大きな魅力の一つであるはずです。
課題があるとすれば「何が学べるのか?」というところにあるかと思います。旧萩国際大学、旧山口福祉文化大学の時代より本校は野球、ゴルフ、バレーなどスポーツに力を入れてきました。スポーツでプロの世界に行けるのは一握りですが、大学までスポーツをすることはとても有意義なことで、プロになれなくても地域の子ども達の指導者になるとか、自身が学んできたスポーツを通じて豊な人生を送ることができます。アメリカではスポーツリーダーは地域の発展のため必要不可欠な存在とされ大変名声を浴びています。そのような人材を多く輩出することの意義を、学生だけでなく地域の方々にも理解を深めてもらう必要があるかと思います。
また、昨今、全国的に退職後の高齢者の方が学びを求めて大学に入学される方も増えています。人間の持つ欲求の中で知的欲求はとても大きく、学ぶこと自体が楽しいと思われる方は少なくありませんので、高齢者向けのコースを新設することも大きな可能性を秘めているかと思います。

■新設される吉田松陰研究所についてお聞かせください。
-最近では、酷いことに松陰先生にテロリストやメンタリストとの烙印を押す向きもあります。松陰先生の著作の一部を取り上げ、その片言隻語を論う(あげつらう)事例や、獄中での厳しい環境下で著された過激な論旨について後刻諸氏からの指摘に対し、自己批判している内容をその一部のみを捉える事例などが多発しています。松陰先生の想いを正しく理解していくことが必要です。
松陰先生の膨大な著作の研究を進めていくこと、そしてその思想や生き様をしっかり次の世代に伝承することを進めたい考えています。資料の整備や次代を担う研究者への便宜供与等にも意を払っていきます。

ありがとうございます。就任直後で決定したものは少ないかと思いますが、既に決定している対外向け事業などありましたらお教えください。
-先ずは、6月22日、椿東小学校体育館に能楽狂言方和泉流二十世宗家の狂言師・和泉元彌氏をお招きして吉田松陰先生を題材とした「至誠」というオリジナル公演を開催します。また、例年行っている公開講座も開催いたします。明治改元記念日の10月23日の2日前となる21日には公開講座の一つとして記念講演と研究員等によるシンポジウムも開催する予定です。
学生だけでなく市民も学べる、また地域交流のできる大学、そして地域社会の中心となる大学となれるよう今後も様々な事業を執り行っていく予定ですので、ご注目いただけたらと思います。

■ありがとうございました。