工房木象庵 藤田浩司さん(家具職人・46歳)

mokushouan

Q.これまでの経歴を教えてください。
A.萩高校、名古屋工業大学機械工学科を経て、24歳の時に、東京でシステムエンジニアとして勤務しますが、29歳の時に、ワーキングホリデーを利用してニュージーランドへ行きます。現地の人のシンプルな考え方やおおらかさ、そして、美しい自然に触れたことは人生の転機となりました。帰国後は、東京のベンチャー企業でシステムコンサルタントとして勤務しますが、36歳の時に退職。自らの手で物を創り出す職人への憧れ、また、もともと自然や木が好きだったのですが、ニュージーランド生活でその思いを強くしたことから、自然と関わり合いながら、伝統工芸品などをつくる職人になりたいと思い、その後は、日本中を旅しながら、今後を模索しました。そんな中、松江の家具職人の方が作った木製家具に一目惚れをします。その頃から伝統工芸品ではなく日用品に魅力を感じ始めていたのですが、その家具は、木が生きているように感じ、自分もこういった家具を作りたいなと思ったのです。39歳の時に、出雲の高等技術学校の木工科に入学して基礎を学び、卒業後は、4年間、その松江の家具職人の方の工房で修行を積みます。いずれは、地元に帰って独立したいと思い、機械音などが迷惑にならないような場所を探していたところ、むつみで物件が見つかったことから、昨年4月に帰郷。同年12月に工房を開業しました。

Q.昨年の豪雨災害では、被災されたそうですね・・・。
A.開業を8月に控えていたところ、その直前で被災しました。私自身は、近所の方のお宅に避難したので大丈夫でしたが、住居と工房は胸の高さまで水が入り、機械や工具なども全て浸かってしまいました。被災後は、その修理や手入れなどに追われ、大幅に開業が遅れました。あの時は、さすがに落ち込みましたが、両親、親戚、友人をはじめ、ボランティアを含むたくさんの方々に助けていただいて、開業することができました。

Q.災害を乗り越えて開業をされたわけですが、今後は、どんな展開をお考えですか?
A.私は、線の美しさにこだわって家具を製作しています。目指すものは、「荒々しさと緻密さの共存」。天然木から切り出したままの無垢材を使用しているのですが、その木目や荒々しさを活かし、釘などは使用せず、木の伸縮性を考慮しながら、日本古来の伝統技術である組手や仕口の技術を用いて製作しています。そして、様々な種類のノミやカンナを使用して、細かな部分まで手仕事を施すことにより、家具に美しい線が生まれ、その滑らかさや質感から、触っても楽しんでいただける家具が出来上がります。さらには、天然桐油を塗装して仕上げるため、季節によりますが、塗装と乾燥に1ヶ月半を要し、部材選定を含めると、椅子一脚を作るのに2ヶ月ほどはかかります。こういった木工への考え方に共感して好きになってもらい、毎日、見る度、使う度に違う喜びが湧き上がるような家具が作れたら良いなと思います。現在は、知り合いを通して都市圏の方から依頼を受けていますが、今後は、地元の方にも知っていただけたらと思っています。木が生きた年齢と同じくらい使用できる家具を作らなければいけないと言いますが、一生ものとして、子どもの代まで使ってもらえたら嬉しいですね。

工房木象庵
萩市高佐下2118
☎08388・8・0200
HP/http://mokushoan.com