来年2024年7月26日から8月11日の間、フランス・パリで開催される第33回夏季オリンピック競技大会。3週間余りの大会期間中、32競技329種目が行われ、その中の一つ、セーリング競技ウインドサーフィン種目(iQfoil級)で初のオリンピック出場を目指す渡辺純菜さん(トランスフォーム太陽勤務)。先月、鹿児島県鹿児島市で行われた「特別国民体育大会」では6位入賞を果たし、現在、来年1月に開催されるパリ五輪選考会に向け、就労の合間にトレーニングに励まれています。
今号の北浦うぇぶでは、渡辺純菜さんにお話しを聞いてきました。
■先ずは、ウインドサーフィン種目iQfoil級についてお聞きしたいです。ウインドサーフィンは、セイルボードにセイル(帆)が付いていて、ヨットと同様、風の力や揚力を使って海上を進むものだと認識していますが、その後に続くiQfoil級とは、どのようなものでしょうか?
-iQfoilとはウインドサーフィンで使われる船種(ボード)の一つです。ボードにはいくつかの種類があるのですが、ワールドカップや国際大会の競技種目に準じて開発され、iQfoilは、来年行われるパリ五輪の公式競技として採用されます。2021年に開催された東京五輪のウインドサーフィン種目では、それまで主流となっていたRS:Xというボードが採用されていました。RS:Xでは、ボードの底にダガーボードという横流れを防ぐ翼がついていますが、iQfoilには、高速艇などで使われるハイドロフォイル(水中翼)が付いていて、走行時にはボードが水面から浮かび上がり、微風でも進みやすく、RS:Xと比べるとスピードもあり、コンパクトで素早い動作が可能となっています。
■なるほど。ウインドサーフィン競技といっても色々とあるのですね。渡辺さんとウインドサーフィンの出会いについてお聞かせください。
-ウインドサーフィンとの出会いは、山口県スポーツ協会が毎年行っているYAMAGUCHIジュニアアスリートアカデミーに小学5年生のときに合格したことからです。アカデミーはスポーツ能力に優れた児童を早期に発掘し、山口県から世界へ羽ばたくトップアスリートの人材育成を目標としているもので、当時はレスリングとセーリングの2競技に特化されていて、合格後2競技の中から選択しなければなりませんでした。幼心で、なんとなく、レスリングは怖そうだなと思い、セーリングを選択したところからが、ウインドサーフィンを始めるきっかけになりました。
■高校時代は光高校のヨット部、大学時代は鹿屋体育大学のウインドサーフィン部に所属されておられましたが、光高校のヨット部に入部されたのは何故でしょう?
-アカデミーのトレーニング会場が光市で、中学を卒業するまで週3回通っていました。また同じ会場で活動していたのが光高校ヨット部の皆さんで、アカデミーに入ってから、ずっと先輩方の姿を見て育ってきたので、自ずと光高校に行くものだと感じていました。
■ヨット部でもウインドサーフィンは出来たのでしょうか?
-はい。顧問の先生がヨットもやりながらであればウインドサーフィンもして良いよと言ってくれたので、並行してトレーニングをしていました。国民体育大会では一人乗りのヨットで出場し、ウインドサーフィンの方では、高校2年生の時、ISAFユースワールドという国際大会に出場することができました。
■大学卒業後、萩市に本社がある太陽コミュニケーションズに入社されます。どのような経緯で入社されたのでしょうか?
-きっかけの一つは、パリ五輪のウインドサーフィン種目がRS:XからiQfoilに変更となったことです。学連で使う船とオリンピックで使う船では全く違っていて、特にオリンピックで使われるRS:Xは大きく、重量もあり、扱うのに力だけでなく体重も必要で、更に、競技の歴史もあり、ベテランの選手も多くいますので、このままアスリートとしてやっていくのは難しいかなと感じていました。しかしながら、パリ五輪からはiQfoilが採用されることとなり、iQfoilでなら五輪出場できるのではないかと、大学卒業後も働きながら五輪出場を目指すことを考えるようになりました。そしてタイミングに恵まれていたとしか言いようがないのですが、大学4回生の時、山口県体育協会主催でアスリートと企業のマッチングイベントが初開催されます。そのイベントでは県内に事業所がある企業11社が参加されており、その一つに太陽コミュニケーションズがありました。会場では時間もなく話すことはできなかったのですが、その後やり取りをさせていただきご縁があって入社でき、働きながら競技を続けることができています。
■就職し萩市に拠点を移されて、トレーニング環境も変化があったかと思います。セーリング競技が盛んではない地域かと思いますがいかがでしょうか?
-瀬戸内海に比べ、日本海は風が強く波も厳しいです。風がなければiQfoilは浮いてくれないので、風があることは喜ばしいことですし、日本のレースでは波がないフラットな海面で行われることが多いですが、海外のレースでは波が高いところでのレースもありますので、トレーニングするには適している地域だと感じています。ただ、環境面では、不便と言いますか、改善できれば良いなと思うところはいくつかあります。
■改善できれば良いなと思うようなところはどのようなところですか?
-例えば、こちらで合宿を開催したいと思っても、地域にセーリング競技の合宿を行ってきた経験がないというか文化がないので、合宿に適した宿泊施設や移動・運搬の手配が難しいところです。もちろん私に伝手がないところも大いに関係していることです。また、コーチが乗るボートも漁船になってしまって、選手が求めているような船を用意できないなど、合宿を誘致したくてもハードルが高く、合宿が行われるところへ遠征しなければならないところは改善したいなと思っています。
■競技人口が増え、ウインドサーフィンが盛んになると良いなと思います。その上で、iQfoilの魅力についてお聞かせください。
– iQfoilは海面に浮いて走行するので、スピード感が違うところが大きな魅力ですが、細かなセッティングの違いが、走行に大きく影響を及ぼすところも魅力的です。東京五輪まで採用されていたRS:Xとなると、セッティングを変えるところはほぼ無かったのですが、iQfoilでは、フィンの角度を1度変えるだけで浮き具合が全然違ったりして、その都度体でボードを押さえる力が変わったり、それに準じてセールの貼り方でも変化がありますので、自分にあったフィッティング、自分が求めてる操縦性を、セッティングによって追い求める楽しさがあります。
■今後の展望をお聞かせください。
-来年に入って1月下旬から開催されるパリ五輪の1次選考会で良い成績を残し、通過することですね。選考会に向けて来月12月から萩を離れ合宿を始めます。1次を通過して、最終選考も通過して、日の丸を背負ってパリ五輪に出場したい。今は、ただただその思いでいっぱいです。
■最後に読者の皆さんに向けて一言お願いいたします。
-練習で関東へよく行っているんですが、他の土地に行けば行くほど、萩の方からの応援は有難いなと思っています。お声がけいただいた時は、心から応援してくださってるって凄く伝わってきます。それが私の原動力になります。合宿や遠征先で、嫌なことがあっても帰る場所があるって思うと、挫けず頑張ろうってなります。皆さんの応援をパワーに変えて、選考会を先ずは突破していきたいです。
■ありがとうございました。
