連載 むつみ豚と雨女vol.81

「一生のお願い」は強い懇願の現れであり、生涯において行使できるのは一度のみ。しかしお願いする対象者が変わればその都度行使できるのだとすれば、一生のお願いは無限に使えるのではなかろうか。

とはいえ親に対して使えるのは一度だけ。三男坊は12歳という人生の序盤において既に一生のお願いを使ってしまった。普段あまり物を欲しがらない彼が、どうしてもどうしても欲しいという楽器マリンバ(木琴の一種の鍵盤打楽器、かなりでかい)。11月の三男坊の誕生日が近づいたある日、「もう一生誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントもお年玉もいらないからマリンバが欲しい、一生のお願い」と懇願。値段を見てびっくり、むむむ…これは確かに一生のお願いレベルのお値段だわ。音楽に特に造詣の深い家でもないし、場所取りそうだし、なによりそのうち飽きてやらなくなるんじゃ…。ちょっと父さんと相談するね、と検討すること数日。普段自己主張の強い末っ子と、理論派で厳しい姉に挟まれ我慢することの多い三男坊の一生のお願い。買ってあげましょうかね。でもプロ用は自動車かえるくらい高いんで、練習用で勘弁してね。

マリンバを叩く棒の先に玉のついた道具はマレットと言いますよ。太鼓のバチではないですよ。このマレットをプロは片手に2~3本持って演奏するのです。YouTubeで演奏動画を見ても凄すぎてどうやって操ってんのて感じなんで、素人は片手にマレット1本ずつ持って地道に練習練習。三男坊君、目標を高く持つのは良いことだが初心者にその楽譜は難易度高すぎないかね。まずは『夢をかなえてドラえもん(連弾)』を母ちゃんと完成させようじゃないか。母ちゃんも老眼鏡かけて頑張るよ。

あれから2か月。マリンバの上には畳んだ洗濯物が置かれている。