深川妙見(みょうけん)みなと祭り、新たな船出へ! 湊地区の若者たちが描くこれからのまちづくり

長門市中心部の日本海に面した湊地区。地域の人々に親しまれてきた「深川妙見みなと祭り(以下、みなと祭り)」が、今、大きな転換点を迎えています。その舵を取るのは、昨年6月「湊地区まちづくり協議会」の事務局長という役割を担うことになった小崎真一さんです。自身の物心がつく前から続くというこの伝統の祭りを、時代の大きなうねりの中でどう未来へと繋いでいくのか。小崎さんの挑戦は、単なるイベントの刷新に留まらず、地域全体の活性化を見据えた航海のはじまりです。
長門市湊地区の象徴的な存在である「妙見山」、その山頂に約600年前、湊の総守り神として、建立されたと言われている「妙現社」。「妙現社神事」の起源は不明だそうが、昔は妙見山の下で相撲大会が開催されたようだ。その後、地元の漁業協同組合が主体となり、[「船祭」として市場での神事が行われ、豊漁を願う色鮮やかな大漁旗を掲げた漁船がパレードする光景は、祭りの象徴でした。海と共に生きる人々の安全を祈願し、また地域住民が一体となって楽しむ、素朴で温かいコミュニティの祝祭。カラオケ大会に興じる人々の笑顔が、当時の賑わいを物語る。しかし、全国的な漁業従事者の減少と高齢化の波は、この湊地区にも例外なく押し寄せ、かつて祭りを彩った多くの漁船は姿を消し、現在わずか2隻にまで減少。ここ10年はマルシェのような要素が取り入れられて開催されています。「地域住民のための祭りなのか、それとも外から人を呼び込むためのイベントなのか。中途半端な印象は否めませんでした。」と語られます。
そんな折、地域住民の声に押される形で、湊地区まちづくり協議会の事務局長依頼が舞い込みました。行政からの打診ではなく、地域からの直接の期待。過去にも様々な地域活動に関わってきた経験を持つ小崎さんは「生まれ育ったこの場所に恩返しができるなら」とその重責を引き受ける決意を固めます。
着任後、すぐに取り掛かったのが、高齢者へのデジタルサポート事業。高齢者もLINEが浸透しているが、使い方を知らない方が多いと知り「地元高校生と学ぶ はじめてのLINE教室」を企画する。高齢者と高校生がマンツーマンで指導する形で、スマホ教室ではなく、あくまでもLINEにこだわったそうだ。「LINEであれば、高校生でも教えられると考えました。実際の教室では、LINEというデジタルツールを教える場で、昔ながらの対面でのコミュニケーションが深まるいう、不思議な空間でした。」と小崎さん。
続いて毎年11月に行われてきた「ながとご当地グルメ祭り」に、新たに「NINA ナガト★イルミネーション★ナイト★アミューズメント」の新企画運営。「巨大電飾運試し」をテーマとし、「イルミネーション千本くじ」と「人間クレーンゲーム」を軸に、空き店舗をゲームセンター風に仕掛け、多くの来場者で賑わいをみせた。小崎さん自ら「NINAマン」に変身して、ジャンケンという昭和時代さながらのゲームで体を張る。「私もそれほど若くはないのですが、体に鞭打ちました。このデジタルの世の中で、ジャンケンだけでたくさんの人が集まるとは思いませんでした。」(写真はジャンケン大会をするNINAマン。)
そして、地域を引っ張ってきた先輩にだけ任せるのではなく、若い世代でチームを立ち上げる。その名も「波と湊組(なみとみなとぐみ)」。地元の釜揚げしらすを使った商品を開発し、お祭りで商品販売もした。この若手のチームが、長く続いてきたみなと祭りに変化をもたらすことになる。
事務局長として改めてみなと祭りと向き合った小崎さんは、まず現状を冷静に分析した。漁業の衰退という構造的な問題を抱える以上、かつての形に固執することはできない。むしろ、この状況を逆手に取り、新たな魅力を持つイベントへと大胆に舵を切るべきではないか。小崎さんが描いたのは、「内向き」から「外向き」への転換でした。湊地区の住民だけでなく、長門市内全域、さらには市外、県外からも人々が訪れたくなるような、ゴールデンウィーク期間中の長門を代表するキラーコンテンツへと祭りを育て上げること。そのための第一歩として、2025年のみなと祭りの核に据えたのが、「みなとマ」と題したフリーマーケットの開催です。
湊地区は「花火大会」や「やきとり祭り」など長門市の中心的なイベントが数多く開催されている。雨天でも実施できる市場の存在、豊富な駐車場などの好立地を活かすことを考える。まずフリーマーケットを市場内に車両が乗り入れて販売する「カーブーツ形式」にすること。またテーマを絞ったブースを設置することで、興味を持った方へ直接的なPRをすること。今年は不用品の家具に特化した「家具マ」と銘打って開催する。もしうまくいけば、来年以降は食器、CDなどの音楽商品、キャンプ用品など様々なテーマでの展開も考えられる。飲食ブースも、地元の飲食店やキッチンカーを積極的に誘致し、地域の味も楽しめる空間を創出されます。山口県は「餅まき」が恒例だが、「長門で一番の盛り上がりを見せる」と小崎さんが言う名物の「餅まき」は、今年は時間を追加して2回実施し、より多くの参加者が楽しめるように配慮されています。祭りと共に開催されてきた相撲大会では、今年は子ども相撲だけはなく、久しぶりに「女尻相撲」が復活し、賞品の「米」をめぐって、熱い戦いが会場を盛り上げます。
さらに、この変革を推進するため、「波と湊組」が「みなとマ」の企画・運営の中心を担います。これまで祭りを支えてきた先輩たちと、若い世代が連携し、祭りの新たな原動力となりつつあります。「若い感性と行動力が、きっと祭りに新しい風を吹き込んでくれるはず」と、小崎さんは若手メンバーに大きな期待を寄せています。
また、小崎さんの視野は、深川妙見みなと祭りの成功という一点だけに留まりません。むしろ、祭りの再生は、湊地区全体の活性化という、より大きな目標に向けた布石なのだと考えられます。「一年に一度の大きなイベントも大切だけど、それだけでは地域は変わらない。もっと日常に根ざした、継続性のある取り組みが必要だと考えます。」と語る小崎さんの口からは、様々な構想が次から次へと飛び出します。それらの構想は、まだアイデア段階のものも多いのですが、湊地区に点在する「眠っている資源」を掘り起こし、新たな価値を生み出そうという強い意志が感じられます。
漁師町の伝統を受け継ぎながら、「みなとマ」という新たな目玉を据え、若者のエネルギーを注入し、大きな変革に挑む長門市の深川妙見みなと祭り。それは単なるイベントのリニューアルではなく、漁業の衰退という逆境を乗り越え、地域資源を最大限に活用し、持続可能な地域づくりへと繋げていこうとする、湊地区全体の未来を賭けた挑戦と言えるでしょう。小崎事務局長と湊地区まちづくり協議会が描く未来予想図は、まだ始まったばかり。今年のゴールデンウィーク、生まれ変わった深川妙見みなと祭りがどのような賑わいを見せるのか。そして、その活気が湊地区全体へと波及していくのか。多くの期待を乗せて、祭りは新たな船出の時を待っています。

深川妙見みなと祭り
開催日 5月3日(土・祝)
会場 山口県漁協湊魚市場
スケジュール

9:00〜 妙現神社神事
10:00〜 市場神事
10:00〜 みなとマ 販売開始
10:20〜 第3回子ども元気相撲みなと場所
11:00〜 漁船パレード
12:00頃 餅まき(1回目)
13:30〜 第6回女尻相撲大会
15:00頃 餅まき(2回目)
15:00 終了

飲食エリア
ちくぜん総本店(焼き鳥)/はしもと寿司(巻き寿司)/さつき(お好み焼き、焼きそばほか)/MUCHO(タコス)/リストランテ アンジェラ(とらふぐの唐揚げ・味噌汁ほか)/真心漁品 松本(連子鯛寿司ほか)/米粉シフォンケーキ Lereve(米粉シフォンケーキ)/パンころりん(各種パン)/ふくちゃん(塩唐揚げほか)/NaNayaFarm(カレー、焼き菓子)/sora(ジビエ料理、自家製ドリンクほか)/music&coffee(コーヒーほか)/TukTuk Cafe(かき氷ほか)/虎屋製菓(かき氷ほか)/ラクトゥク(スイーツほか)/波と湊組(磯焼き、生ビール、ドリンクほか)

主催 深川妙見みなと祭り実行委員会
共催 湊地区まちづくり協議会、長門市相撲連盟
後援 長門市、(一社)長門市観光コンベンション協会
協力 深川地区観光振興会
問い 湊地区まちづくり協議会 事務局(tel:070-1360-0078)※10時~17時対応